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前回は先祖代々ジェネシスシップを守ってきたニダのストーリーを紹介いたしました。今回はそのニダのストーリーの途中から登場した、ガブリエルのストーリーを紹介していきたいと思います。ニダはガブリエルはどこかおかしいといっていたがそれは何故なのか…?は、今回のストーリーをみれば理解できるようになっています。
それでは早速見ていきましょう!
カブリエルの記録
(※ )部分はストーリーが分かりやすいよう入れている注釈です。ストーリーに関する重要部分やゲームのメタ的な部分については太字にしています。#01
自分のために働いていた日々のことを覚えている。この両手で、土から富を掘り出した。(※ガブリエルは金の探鉱者だった)だがその富と土地、命さえも英国人に奪われてしまった。 そうして私は暗間に落ち、再び立ち上がったと思ったら煉獄にいた。そこは幻覚のような異世界で、化け物や悪魔に苦しめられた。罪を償おうと苦悶していると、天使がそばに来て、女性の声で励ましの言葉をかけられた。(※HLN-Aのこと)彼女には敵対者との死闘に参加するよう頼まれたが、私は転生と賠償を約束してくれた2つ目の声に従うことにした。(※ロックウェルのこと)
目が覚めると天空の庭園にいた。新しい前腕の片方には輝く宝石が埋め込まれていた。次に、私をここに届けた者の声が、私が死後の世界(※Genesisシミュレーションのことを死後の世界と思っている)で身に着けていたものと同じ魔法の鎧のもとへ導いた。その瞬間、私は自分の試練がまだ終わっていないことを悟った。
#02
しばらくの間迷子になって庭園を彷徨いながら、嘘のような空に釘付けになっていた…周囲のすべてが地平線から他方の地平線までアーチ状に広がるきらめくホイールの内側に横たわっていた。ホイールの横には別のホイールがあり、共に回転している。その光景は、奴隷たちが英国人の金鉱で歌っていた歌を思い出させた。「エゼキエルは空中のはるか上空でホイールを見た...」それから、蛇が自らをむさぼり食うために回転している昔の絵(※ウロボロスのこと)を思い出した。とこで見たものだろう…?(※ウロボロスはアレクサンドリアなどの文化圏の思想に関係する)
大人になって以来、私は超自然的なものとは無縁だったが、それは煉獄に追放される前までの話だ。私は心を静め、高貴な者の声を聞こうとしたが、聞こえてきたのはその庭園で失われた別の魂の声だった。(※ニダが無線で呼びかけてくれている) 魔法のヘルメットが近くにあった隠し扉の存在に気付かせてくれた。中に入るべきだろうか?
#03
恥ずかしながら、自分を奮い立たせて地下を冒険する勇気を手にするまでには長い時間がかかった。落とし戸は一種の坑道に通じていて、同種の滑らかな金属で覆われている。少女に部屋の向こう側から話しかけられるまでもなく、私はここでも恐怖を感じていた。
最初は彼女が何を言っているのか理解するのに苦労したが、どういうわけか彼女の言葉は徐々に頭に入ってきた。彼女が私を「征服者」と呼んでいるように聞こえた。意味が分からず混乱していると、自分が着けていたヘルメットのことを思い出した。私は彼女を安心させるためにヘルメットを脱いだ。そうすると、今度は「入植者」と呼ばれた気がした。私は悪役扱いされることに腹を立てたが、彼女は私を恐れていなかった。
彼女は1人で武装もしていなかったため、自分の隠れ家に私を導くような危険は目すべきではないと忠告した。しかし彼女は、私の心配もどこ吹く風で、飲み物を出してくれる間もなく自分はニダだと名乗った。
#04
ニダが言うには、本人は代々空中庭国の世話に生涯を捧げてきた家系の出身らしい。そして我々は今、何者かによる侵略を受けているそうだ。完全に変貌してしまったもう一方の庭園ホイールの生物や光景を見せられた。慣れ親しんだ時代や場所が完全に消え失せてしまったことを理解した私は、弱々しく惨めな気分になった。死後の世界――ニダはGenesisと呼んでいた――を乗り越えた私は、来たるべき戦いへの準備ができているはずだ。ニダはそう言ったが、私は確信が持てなかった。それからニダは、巨大な機械のラバ(※ストライダーのこと)を見せてくれた。庭園の世話人が土地の整備用に使っているもので、太陽のように光り輝く槍で硬い岩をも切り裂けるようだった。
それで私は理解した。我々は恐れていたほど無力ではなかったのかもしれないと。
#05
ついにニダに彼女がエレメントと呼ぶ不思議な金属について聞くことができた。気になって仕方がなかったものだ。彼女曰く、史上最強の物質らしい。私の魔法の鎧から彼女の巨大な乗物まで、私たちの身の回りにあるほぼすべてのものの動力となるらしい。これまではわずか数キロの金属のために自らの命を危険に晒したことを恥じていたが、今ならその価値があったと思える。これほど魅力的なものを欲さないようにするのは困難だが、この奇跡の代償は大きかったとニダは言う。エレメントは地球を汚染し、今は彼女たちの空中庭園すら汚染している。
彼女たちを脅かす侵略勢力がその汚染を持ち込んだ可能性についても聞いてみた。ニダは驚いた様子だったが、その可能性が高い点については同意してくれた。
#06
あの夜、ニダのエレメントをるつぼで温めている夢を見た。不安定な状態から、無限の可能性を持つ物質へと変えるために。それから刃を鋳造するために鋳型に注ぎ、折り曲げるために金槌で何度も何度も打ち、強化して不純物を取り除いた。切れ味を確かめるために刃を持ち上げると、刃の表面に見慣れないものが反射して見えた
――それは、魔術師あるいはカルト信者の顔だった。 辺りを見回すと、自分がどこか暗い地下墓地の円天井の一室にいることがわかった。天井の中央が開いていて、頭上に明るい満月が見えた。そして部屋の影から得体のしれない声が聞こえ、私の刃の出来を褒めた…
目覚めると、私は庭園下の迷宮におり、自分が分からなかった。 私は大鉱脈が眠る国の英国系暴徒に襲われた探鉱者だったのか?あるいは、地中海の海岸で不可解な芸術に励む古代の錬金術師だったのだろうか?
#07
上空にある庭園を動き回るストライダーの働きについて、ニダから訓練を受けている。ストライダーは独自の意志に従うようだが、それらを手なずけ、他のホイールを襲うために利用できると言う。彼女が賢いのは確かだが、それでも私がまるで愚かな子供であるかのように上から物を言われるとどうしても苛立ってしまう。侵略者との戦いに手を貸すことに確信が持てないのはそれが理由だろう。一方で、私はアルタ・カリフォルニアの牧場を英国の侵略者から守るための戦争には参加している。そして財産目当てに奴らに殺された。庭園や鉱物の富に何の興味がなかったとしても、これは占領軍に復讐を遂げる貴重な機会と言える。 最終的にどのような世界に腰を落ち着けるかは分からないが、勝利すればいくらかの土地を所有できるかもしれない…
#08
ストライダーを探すために危険を承知で地表に降りると、すぐに2体見つかった。地面から露出している岩へと向かってうろついているところだった。徒歩ではかなりの距離があったため、ニダは夜間にやるよう主張してきた。そこで初めて、このホイール上になぜ昼と夜があるのだろうというところまで考えが至った。彼女の仲間が星々まで飛び立ったときに、太陽もいっしょに連れてきたのだろうか?岩の上までたどり着く前に、ニダが暗間でも辺りを見回せる魔法の道具の使い方を教えてくれた。おかげで気が紛れた。まったく見えないはずの物を見つめるために、何度も立ち止まりたいと思った。鎧を着用していた私が先導を務めたが、あの少女もなんとかついて来た。
我々が追いつくと、ストライダー達はまるで会話でもしていたかのように、お互いの口先を近付けて立っていた。ストライダーたちは本当に巨大で、近付いたときは思わず息をのんだ。あの巨大な機械を手なづける方法を知っていると言うニダの言い分を信じるしかなかった。
#09
ニダは巨大な4本足の機械の足元に立ち、手にしていた装置をいじっていた。 ストライダーが頭を地面に向けてきたので、私はバカなふりをして彼女の前で跳んでみせた。機械なのは重々承知しているが、その金属製のあごで彼女を踊り食ってくれないかとどこかで期待していた。彼女はニヤニヤしながら私に向かって首を横に振ると、ストライダーの首の上に自らを引っ張り上げた。そのまま、どこからともなく固定されたサドルのようなものがある背中まで移動した。しばらくすると、2つ目のストライダーが私のために頭を下げたが、私はニダが立つ最初のストライダーの上を登ることにした。 この巨大な動物を飼いならして乗りこなすには、最初から自分で試すよりも彼女から学ぶ方が賢明な気がしたからだ。
#10
それから1日か2日、ニダが言うところの1、2サイクルの大半は、ニダがストライダーの性能を試す中で彼女から学ぶ時間となった。マシンの高い背中に乗り、坂を上り不毛の地に足を踏み入れた。彼女はこの場所なら姿を隠せると考えたのだろう。彼女は岩を吹き飛ばさんばかりの光に照らされた渓谷の鋭い岩肌の中で、マシンを操る方法を教えてくれた。 採掘がニダの目的ではないことは分かっていたが、ストライダーから降りて岩の切り口に貴重な鉱石がないかを調べたい気持ちに抗うことはできなかった。
瓦礫の山から金の痕跡を見つけることはできなかったが、明るい紫色の破片が目に留まった。私はニダが気付く前にそれを掴んで隠した。
#11
その夜見た夢の中で、私は…地下墓地に戻っていた…アレッサンドロか?違う、アレクサンドリアだ。エジプトの沿岸部にある場所だ。街の地下深くにいても、海の匂いがした。たいまつが、周囲の岩壁に彫られた二冠のヘビの姿を照らした。私は片方の肩に上層のセラペウム(※エジプトの国家神セラピスを祀った神殿のこと)にいた孤児を担いでいた。 地下基地の最深部の通路は一部が浸水していて、私は冷たい海水に濡れたマントを引きずりながら歩いた。当惑したうめき声をあげながら、肩に担がれた子はマンドレイクの根の作用に苦しんでいた。 (※マンドレイクの根には神経毒がある)私は自分の投与量に自信を持っていたが、彼女が時間内に錯乱状態から抜け出すことはなかった。いや、私は何をした?
私は峡谷の中で目を覚まし、暗問で青い光を放ちながら私たちを見守るストライダーを見上げた。私はまだ短剣が足に巻かれたあの夢の感覚を覚えている。
#12
夢の中の不安は翌日も消えることはなかった。ニダが庭園に迫る恐ろしい脅威とその壮大な目的について私に伝えようとしていたが、集中して聞くことはできなかった。 私たちは巨大な機械に乗って、彼女たちが虚空の中に立ち上げた風景を横切りながら、私は何千年も前のどこかのオカルト信仰者による陰謀に悩まされていた。あれがただの夢だったのかどうかも分からない。もう二度もその男の肌とその目を通して別の時間の光を見た。彼の人生はもはや他人事ではなく、私がリオ・デ・ロス・アメリカノスの近くで送った人生ぐらい身近に感じられる。私はどちらの人生を送ったのだろう?一両方か?それとも、どちらでもないのか?
私は本当にこの信じ難い未来にいる人々のために戦うため、忘却から引きずり戻されたのだろうか?身に覚えのない大罪のため、水を切る石のように歴史を跳び越えてきたのだろうか?
#13
夜が更けるころ、ニダは興奮した様子で私に何かを見せたがった。彼女は隠し扉をこじ開けて、魔法の装置を内部の機械にはめ込んだ。その後の彼女の説明を理解することはできなかった…ニダは、彼女がGenesisと呼ぶあの世での時間から、彼女が作ったある種のゲームに接続するために繋げられていると言った。 その後、 彼女が何かの動きをしたと思ったら、私は一瞬で別の世界に新しい体で存在していた。頭上にホイールはなく、雲が散りばめられた夕焼けが広がっていた。私は状況を理解するのに苦労した。ここがニダの空の庭園なのだろうか。彼女に呼び掛けたが、聞こえてきたのは煉獄で出会った天使の声だった。天使は何か重要なことを私に伝えた。次の瞬間、私は「現実」に引き戻された。ここが現実かどうかは定かではないが。
ニダは満面の笑みで私に感想を求めた。私は酷く気分が悪くなった。
#14
自分の心の中の悪意を手放すのに、そう長くはかからなかった。それは、ニダに落とされた夢の世界、夕日が沈みゆく夢の世界に現れた天使のおかげだろう。ニダは、自分が強要した幻覚に対する私の反応が気に入らず、何時間も口をとがらせていた。彼女が称えられると思った理由は私には理解できなかった。私は自分の感覚や記憶を信用していない。 この庭園のホイールが私の非道な魂を処刑するものでないのなら、私は魂の破滅から逃れたということなのだろうか。 私は暗闇の中で横になり、再び夢を見ることを恐れながら、少女が私を苦しめるために送り込まれた悪魔なのかと考える。
そして、あの声が私に囁いてくる。私をGenesisから目覚めさせ、鎧のもとへ導いた声だ。天使は嘘をついているとその声は言った。
#15
私の不注意で、隠していた宝物がニダに見つかってしまった。私は、彼女が眠っている間にエレメントの破片を持ち出し、夢の中でそれを不安定な形態から加工可能な金属に変えるため、別の自分が何をしたのかを思い出そうとした。欠片を暗間の中で前後左右に回転させた。その輝きは実に魅惑的だった。 そして、夢の記憶を取り戻そうとしたまま、欠片を横に置いて眠りに落ちてしまったらしい。二ダは現状の不安定な状態では人体に有害だと警告した。そして、それで何をしようとしているのか問い詰められた。その鋭い角で自害でもする気なのかと。彼女は火遊びをした子供を叱るかのような面持ちで、私は手負いの犬のように彼女に反抗した。それからしばらく2人の間に会話はなくなった。
#16
沈黙の中、ニダと共にホイールの端へと向かっているときに、またあの囁き声が聞こえた。回収したエレメントは私自身の所有物であるというのに、自身とはまったく無関係なニダの戦いにわざわざカを貸している理由を聞かれた。生き返ってまだ間もないというのに、私はまたしても死に急ぐ気だったのか?我々は休憩のために立ち止まり、鉱山の牧草地で食事をとった。そして、ニダがベリーを集めていた隙をついた。 私はそれまで数日にわたってニダから受けていた訓練を生かし、ストライダーに乗って一人で渓谷地帯へと走り去った。ニダが遠くからでもストライダーを呼び戻せるのかはわからなかったが、私を見逃すことにしたのかもしれない。
これで、ニダの偉大な機械の力を自分の目的のために思う存分使うことができる。
#17
盗んだストライダーに乗って、峡谷があると思われる場所に戻り、以前に見つけた鉱脈を探した。折を見つけて機械式のジャガーノートを止めて、岩部を爆破させ、純粋なエレメントがあふれ出る紫色の輝きを掘り当てようと努めた。しかし、私の知る方向や距離を計算するための手法は、ここでは役に立たないことにすぐに気づいた。夜になると北を特定するための北極星もない。むしろ、すべての星が私には奇妙に映った。日中は、奇跡的に小さい太陽が不規則にホイールを光で照らし、東も西も分からない。私はまたもや庭園の中で完全に道を見失った。
彼女は私なしで、もう一方のホイールで侵入者と戦い抜けているのだろうか。彼女があの広大な場所で私を探そうとしていたとしても、私には知る由もない。
#18
ニダから逃げた後、私は夢の中で後悔の念に苛まれた。暗闇の中で、テントの捜索のために私を追跡してきた無法者たちへの行き場のない怒りを追体験した。私には新たな州に留まる権利はないと言われた。 奴らは私を自治体に連行して、ありもしない罪を着せると脅してきた。自治体がどちらの言葉を信じるかは明白だった。私は一旦逃げて、森へと戻り奴らを殺そうとした。しかし奇襲は失敗に終わった。私は奴らに唾を吐き、一対一ならどんな目にあっていたかを説明した。結果として、私はその行動を後悔することになった。私は絶命する瞬間に奴らを呪った。奴らが私から奪ったものは、奴らに後悔と苦痛をもたらすだろう。
#19
夜が明ける頃、私は自分が逃げ出したことに怒りを覚えていた。このプライドと頑固な自立心は破滅しかもたらさない。私はストライダーを、ニダを置き去りにした場所、ホイールの端の方へと向けた。失った鉱物による富を取り戻したいという自らの願望と、前世での力の追求という不完全な記憶は脇に置くことにした。この惨めな存在が、せめて一度でも正しいことをする瞬間、機会は今しかないのだ。
私はこの機械を極限まで酷使し、不公平な戦いの中に置き去りにした少女のもとへ向かった。道中、彼女が私のために描いてくれた夢に対する自らの仕打ちを思い出し、恥を知った。彼女は、私のものになるはずだった世界、自分が存在し得ない未来のために、彼女たちが守り続けてきたこの庭園からは遠く離れた世界の夕焼けを見せたかっただけなのだ。
#20
ホイールの端の付近でニダに追いついたとき、私の心は恐怖に支配されていた。再び逃げ出したいという強い衝動に必死に抗った。先に広がる無常な空間に対して、ここの土、水、空気のすべてを支えるガラスがどれほど薄いのかをはっきりと見ることができた。ニダは金属製の台座からストライダーを降ろしていた。私は彼女に合流しようとマシンを降りた。彼女は近付く私を気にする素振りも見せず、台座の近くで何かをいじり続けていた。私は彼女の背中越しに不器用で哀れな謝罪の念を伝えたが、反応はなかった。やがてニダが立ち上がって台座のスイッチに触れると、目の前の巨大な円形扉が開いた。彼女は無言でストライダーに乗り、扉の中へ入って行った。 私は大急ぎでもう一方のホイールへと向かう彼女を追いかけた。
#21
巨大な機械にまたがりながら一連の控えの間を通過する間、あらゆる種類の蒸気とまばゆい光が私たちを迎えた。ようやく別の円形扉が開き、入口を通り抜けると、汚れた庭園にたどり着いた。その場所のほのかに甘い悪臭は実に不快だった。間もなくして、大釘に張り付けられた空の人々の死体が目に入ってきた。間違いなく侵入者の残党への警告だろう。こちらからニダの表情は読めなかったが、それが彼女にとってどれほどの恐怖であったかは想像に難くない。残された仲間はこれで全滅したのかもしれない。
彼女がストライダーを降りたのに合わせて、私も地面に降り立った。彼女の顔は涙で濡れていたが、見るからに正義の怒りも漏れ出ていた。沈黙の中、私たちは彼女の友人たちを汚染された地中に埋葬した。一方では、機械の乗物たちは、クロムメッキが施されたひづめの上で落ち着かない様子を見せていた。
#22
地獄のような光景の中で過ごしている間は、良識を保つのも一苦労だった。 あの経験は恐怖という言葉では言い表せないものだった。骨状の指が頭皮を圧迫しているかのような圧力を感じた。ホイールの中で行われていたことは冒流的であり、その創造自体を貶めるものだ。未知の目的のために自然の秩序を崩壊させ、それを溶かして不浄な新しい何かを形成していた。哀れな空の人々は虐殺され、地平線の彼方に至るまで、彼らの何世代にも渡る努力の積み重ねは抹殺された。ニダにはかける言葉も見つからなかった。
私の思いとは裏腹に、頭の中では動停が規則正しく鳴り響いていた。 やるべきことが分かっているはずだ、という声が聞こえた。この世界にお前を連れ戻したのは私だ。命じる通りにやれば、お前を満足させてやれる、と。
#23
あの有毒な荒れ地で、時間と場所の感覚を完全に失った。なぜ私たちがそこにいたのか、ニダがあの時点で大惨事を阻止するために何をしようとしていたのか、今となっては分からない。頭の中で鳴り響く雷鳴によって、私の忠義心はかき消された。そしてある時から、私の意識は空想の中に落ちていった。私はアレクサンドリアの浸水した地下迷宮で再び道を見失い、重荷を背負ったまま彼女の最終目的地を目指さなければならなくなった。暗闇の向こう、人目のつかない墓室から不気味な紫色の光が輝いていた。 担いでいた意識のない子供を落とさぬよう、足下を包む油っぽい海水の中にたいまつを落とした。その隠された部屋で、私は彼女を生費として捧げた。主は私を追放した陰謀に対する復讐を約束してくれた。
その詠唱はあの印象的な部屋の形、私が鍛えた輝く紫の刃から来ていたのだろうか?それともニダと私を空虚に運んでいた穢れたホイールからのものだったのだろうか?
#24
絶え間ない要求が頭に響き渡っていて落ち着くことができなかった。その要求はあらゆる場所から来ているようだった。だが、二ダなら気にも留めないだろう。彼女は何かの準備に夢中だった。なぜその計画を私と共有しないのだろう?私の助けなど当てにしていないということか?同時に、周囲を取り囲む不自然な環境は、私たちに向けられた警告のようでもあった。「お前は歓迎されていない。干渉するな」と。それにも彼女は反応しなかった。気付いているはずなのに、どうしてあのように自身の目的だけにこだわり続けられるのだろう?
ついに私はその緊張に耐えることができず、一旦立ち止まって話し合いの場を設けるよう求めた。 私たちはストライダーから降りてその足元で顔を突き合わせたが、ニダは私から距離を取ったままだった。計画について尋ねると、なぜ叫んでいるのかと問い返された。彼女にはあの叫び声はまったく聞こえていなかったのだ。 ヒレが付いた奇妙な生物に攻撃されたのはその時だった。(※シャドウメインのこと)
#25
攻撃の直前、ストライダーが甲高い警告音を発した。 ニダがあらかじめ騎乗部に武器を装着する方法を教えてくれたおかげで、私たちが避難する間にも、接近する敵に攻撃を仕掛けることができた。周囲は爆発に包まれ、スライム状の塊も吹き付けられた。ニダは右方向に走り始めたが、気が変わったのか逆方法に切り返した。手と膝をついて足元の泥を掘り始めた彼女は、私を見て手伝うよう促がした。 ぬるぬるとした粘着性の泥を掻き分け、隠し扉を露わにしようとしていると、敵の群れが私たちの頭上の尾根に降り立った。私たちを見つけると、奇妙でとげとげしいたてがみが興奮のうなり音をあげた。
ニダが扉を開き、私たちは急いで地下の暗周に飛び込んだ。
#26
汚染された庭園ホイールの下のトンネルは真っ暗で、汚水にまみれていた。私が足を踏み外したせいで、汚泥と廃物まみれの濁流によって為す術もなく流され、敵から遠く離れた場所まで流されることとなった。計り知れない深さの水に飲みこまれないよう足掛かりや手掛かりを必死に探したが、それも無益に終わった。我々は配管のさらに深みへと、まるで地獄の怪物に食られる漂流物のように流されていった。何マイルにもわたる恐ろしい血管によって生存本能を粉砕され、恐怖に飲み込まれるかのような感覚だった。もはや分別はつかず自暴自棄になった私は、弱々しく泣き、脱出を願ってその内臓の裏側を掻きむしるばかりだった。 そのとき、手の中に何か鋭い物を捉えた。それをあの分厚い皮膜に突き刺すと、私と少女は放出され、気付いたときには奈落の一室の床に倒れていた。疲れ果てていた私は、そこで意識を失った。
#27
セラピス、死者の王、宮の寄贈者よ、私の声があなたが支配する地下世界の深部まで届くことを願う。 私はあなたの卑しい下僕であり、名をイクシオンと改めた。 私がこれまでに行なったすべての行いは、あなたのために行なったことだ。 他の熟練者は私をホイールから追い出し、古文書を盗むことを強いた。あなたの芸術に対する彼らの不完全な理解を補うためだ。夢の中で、その祝福によって神性を与える紫の金属を精製する方法をあなたは教えてくれた。今はこの侮辱から逃れる力を私に貸してくれることを願う。 私はあなたに少女を与え、あなたの祭壇に血を流し、炉床で彼女を燃やした。私は彼女を現世から解放し、その聖なるエネルギーを露わにした。私はあなたの神殿で帝国の兵士に取り囲まれている。
ここに懇願する。私が彼らの刃に倒れたとき、あなたの神秘の知識から導き出される超越を私に与えてほしい。
#28
鋭い輝きと共に私のもとに命が戻った。徐々に、しかし着実に絶望感が増す中で、気道を塞いでいた管を引き抜いた。粘性プラズマに溺れていた私だったが、ふたが開き、不慣れな光に目がくらみ金属の繭から落ちた。前腕からはダイヤモンドが突き出ていた。
全く持って理解できない、ちょっと前まで化け物に汚染された死後の世界にいたのだ。今はあの前のような金属製の育児室の中にいる。私は、管やワイヤーが張り巡らされた人々が液体の中で静止している姿を見るため、次々とガラスを拭った。この場所は何なのか、そして私はどうやってここに来たのだろう?
突然、頭の中で私を神秘の鎧のもとへ導く声が聞こえた。 鎧を身に付けるとその声は、「今すぐ彼女を探しに行け」と言った。
#29
車輪が車輪を追いかける。蛇が自らのしっぽを貪る。忘却が意識を飲み込んでゆく。私はまたしても、我が救世主の地獄の玉座で目覚めた。彼の巨大な瘤が、うつろな壁を床から天井まで丸ごと吹き飛ばした。あの場所はすべてが彼の一部だった。
ただれた肉から目が我々を見下ろし、勝ち誇ったように大きく口を開けた傷が高みから不気味に笑いかけ、四方八方から伸びる触手が我々に手を伸ばしていた。あの目まぐるしい空洞には側面があまりにも多く、角を成してすらいなかった。私は警告のために少女に向かって叫んだが、もちろん彼女はとっくにすべてを理解していた。彼女は、我々の拷問者の巨大な顔に向かって反抗の声を上げた。幾重にも重なった彼の声が、耳をつんざくように辺り一面から放たれた。
彼は彼女に対し、服従して自らの怪物じみた子供たちに新たな夢を与えることで、子育てを手伝うよう要求した。私に対しては、彼が「エドモンジウム」と呼ぶ貴重な資源のために、庭園の採掘を手伝うよう要求してきた。我々は当然拒否した。
#30
反神の大聖堂で、私たちは彼の地震のような怒りに耐えた。怒りの雷鳴が私たちを襲った。その無限の敵意に逆らうことなどできようか?
私たちを必ず服従させることを彼が誓うと、何かが私の背中を這い上がり頭部に取り付いた。抗う意思は消失し、膝から崩れ落ちると周囲のすべてが勝利の雄たけびをあげた。それは、これから私が彼の原材料をさらに掘り起こすことなることを確信させた。(※ノグリンに取りつかれ、洗脳状態となってしまった)
私は握りしめていたエレメントの短剣の存在を思い出し、少女に向かってそれを投げた。「行け」と、最後の力で声をふり絞った。 周囲が暗闇に包まれると、逃げるニダを怒りのうなり声が追いかけていくのが聞こえた。 私は彼女が道を切り開き、この破滅のサイクルをひっくり返す方法を見つけてくれることを願った。創造は、太陽の下でこそ正当な転換が許されるのだ。
以上!ガブリエルのストーリーでした。ニダは「ガブリエルは何かおかしい」と最後言い残していましたが、今回のストーリーを読むことでなんとなく何がおかしいのかが判明しましたね!
まず一つ目に、ガブリエルはロックウェルによって半分そそのかされていること。二つ目に、ガブリエルには生前の記憶が2つあり、それで本人もかなり混乱している状態にあります。彼の挙動がおかしい一番の理由はここにあるんじゃないでしょうか。どうしてガブリエルには正しい記憶(アルタ・カリフォルニアでの記憶)と、身に覚えのない記憶(アレクサンドリア派のオカルト信仰者の記憶)があるのか?それは以前紹介したサンティアゴのストーリーに書いてあります。
サンティアゴの記録に、「エミュとアーカイブがもつれてしまった結果、一人の人間にアルタ・カリフォルニアの金の探鉱者に、ローマ帝国初期のアレクサンドリア派のオカルト信仰者の記憶が付与されてしまった」 そして「この哀れな生命に肉体が与えられませんように…」と書き残しています。
この時はただのシステム異常のお話かな?程度の認識ですが、実はこの2つの記憶を持った生命体がガブリエルなのです。そしてサンティアゴの願いむなしく、彼はジェネシスから呼び覚まされ肉体を与えられてしまいました。
また、ニダはガブリエルについて、「適応する間もなくGenesisシミュレーションを急ぎ足で通ってきたように感じる」「なぜ数ある個体の中から最初に蘇生したのが彼なのか」と最後に書き残していますが、これは”ガブリエルは本来まだ目覚める予定のない個体だった”からではないでしょうか。
冒頭Genesisシミュレーション内で、HLN-Aに一緒に戦ってほしいとお願いされたものの、彼はロックウェルの甘い言葉にそそのかされてしまいます。つまりガブリエルは我々サバイバーとは違い「Genesisシミュレーションを最後までこなしていない」、シミュレーション途中で強制的に目覚めさせられたサバイバーということになります。何故ガブリエルが選ばれたのかは不明ですが、2つの記憶が混在しており混乱状態にあることと、元探鉱者なのでエレメント採掘に従事させやすいとロックウェルが考えたからではないでしょうかね。
そしてロックウェルの目論見通り、耳元であれこれささやき続けた結果ガブリエルは途中でニダからストライダーを奪いエレメント採掘に赴きます。しかし元は善人だったのか後悔の念に苛まれ、恐怖を感じながらもニダのもとへと彼は戻りました。(流石に戻ってきた彼をニダは信用していなかったようですが)。最終的にノグリンに寄生されてしまいロックウェルのいいなりとなってしまいますが、ニダだけでも逃がそうとしていたあたり、やはり根は悪い人ではなかったんでしょうね。
ガブリエルから託されたエレメントの短剣を持ったニダがどうなったかですが、ニダもガブリエルもこれ以上の記録がないため定かではありません。ただ我々サバイバーが降り立つ頃には船は無人であり、状況も好転していないことを考えると、あまり明るい未来が待っていたとは言えなさそうですね。
さて、残るストーリーはいよいよHLN-Aの記録のみとなりました。公式のノート記録が若干怪しい(一部の音声記録が何故か抜け落ちてしまっている)ためまとめるのに少々お時間をいただくかと思いますが、次はラストのノートとなるため、時間はかかると思いますが頑張ってまとめたいと思います!!
完成までしばらくお待ちくださいませー!!
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