都市伝説解体センター考察|あざみと廻屋の正体とエンディングの意味
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基本情報
タイトル:都市伝説解体センター
プラットフォーム:Nintendo Switch / PlayStation 5 / Steam / iOS / Android
ジャンル:怪異を解き明かすミステリーアドベンチャー
発売日:2025年2月13日(Nintendo Switch / PlayStation 5 / Steam)、2026年3月19日(iOS / Android)
開発:墓場文庫
販売:集英社ゲームズ
プレイ人数:1人
公式サイト:都市伝説解体センター 公式サイト
この記事は『都市伝説解体センター』の真相・エンディングまで踏み込んだネタバレ全開の内容です。まだクリアしていない方はブラウザバック推奨です。
なお、この記事はストーリー考察に絞った内容です。謎解きの解答や進行の攻略情報は扱っていません。
クリアしたあと、結局あざみはなんだったのか、廻屋はどこまで仕組んでたのかとか、朝から晩まで考える人になりました。「あざみと廻屋は同じ人物でした」で終わらせるには、あまりにも作り込まれてるんですよね。いろいろ確認したすぎてクリアしたその日に『都市伝説解体センター 全篇解体書』を買っちゃったレベルです!(笑)
そして1周目で見落としていた描写を確かめたくなり2周目を開始。この記事は、2周目で気づいた事メモをもとにした、結局都市伝説解体センターとはなんだったのかの整理記事となります。
同じように「クリアしたけど頭の中がまとまらない」という人の役に立てばうれしいです。
この記事の読み方(4段ラベルについて)
考察記事を読んでいて一番もやっとするのが、書き手の推測なのか、作中で確定していることなのかが分からないことだと思っています。特に本作はふわっとしてる部分と作中に伏線がある部分がどちらも多いので、この記事では項目ごとに次のラベルを付けています。
- 【作中確定】……本編の描写・台詞で確認できること
- 【公式補足】……『全篇解体書』や公式の投稿で補足されていること
- 【考察】……描写から筆者が推測したこと
- 【不明】……作中でも公式資料でも明かされていないこと
「結局どこまでが分かっていることなの?」を知りたい人は、【作中確定】だけ拾って読んでも成立するようにしてあります。あれこれ詰め込んでたらとんでもなく長くなってしまったので…。目次から気になる項目だけ拾って読んでもらって大丈夫です。どの章も、そこだけ読んで答えが出るように書いています。
なお、作中の表現をそのまま扱いたいので、歩の人格については医学的な診断名を使わず、フィクション上の設定として書いています。
福来あざみ・廻屋渉・SAMEZIMA管理人・如月歩の関係
結論:身体は一人。そして「独立した人格」と言い切れるのは、あざみまで
- 如月歩(きさらぎ あゆみ)……ずば抜けた頭脳を持つ人物。計画の立案者であり、実行の主体。体の持ち主
- 廻屋渉(めぐりや あゆむ)……歩の副人格なのか、歩が演じた役なのかは作中で明言されていません
- 福来あざみ(ふくらい あざみ)……歩に作られた人格。歩を認識できず、廻屋も実在の他人だと思っている
- SAMEZIMA管理人……独立した人格ではなく「役」
「4人が同一人物だった」という要約自体は間違っていません。ただそう書くと、4つの独立した人格が同居しているように聞こえてしまいます。実際のところ、独立した人格だと確定できるのは、あざみまでです。
廻屋の位置づけは考察サイトによって扱いが割れているところなので、あとで一節を割いて整理します。
身体が同じ、というところまで【作中確定】
- 体格が同じ……あざみのフリフリした衣装と、廻屋のオーバーサイズな服。どちらも体型を隠すためのものです。ただしこれが効いているのは、映像を通して廻屋を見る側に対してです。『全篇解体書』のP45によれば、映像に映る廻屋は歩本人の体型で、それをオーバーサイズの服で隠しているとされています。一方であざみが見ている廻屋の姿はそもそも幻影で、そちらは「如月努の体格に近い男性」として見えているとのこと。同じ人物を、あざみと他の人とで違う形で見ていたことになります
- 持ち物が兄・如月努にリンクしている……あざみが背負っている鞄は如月努と同じ物。廻屋が首から下げている飾りも、如月努のベレー帽の飾りと同じ物です。あざみと廻屋が、それぞれ努と同じ物を身につけていることになります
- センターの内装は幻影だった……グレートリセット後、あざみとジャスミンが訪れたセンターは長い間放置された空き部屋同然の状態でした。あざみが「本に囲まれた部屋で廻屋と話していた」情景は、すべてあざみの認識の中にだけあったものです。ただしずっと空き部屋だったわけではなく、ジャスミンが面接に訪れた時点では荒れていません。ここからは考察ですが、面接のあとから使われなくなったのかなと思います
- 千里眼と念視の正体……富入の説明によれば、廻屋の千里眼も、あざみの念視も、どちらも歩の推理を可視化したものです。あざみは如月努の眼鏡を介すると歩との同調が強まり、よりはっきり念視ができるようになります。廻屋にも千里眼なんていう特別な力はなく、周囲の状況が分かるのはあざみの目を通して見ているからです
ここまでが動かない事実です。
警察はなぜ廻屋の不在に気づけなかったのか【考察】
ここでひとつ引っかかるのが、警察側の動きです。ジャスミンは当初、廻屋を捜査対象としてみており、潜入捜査としてセンターに入っています。であれば身辺の調査くらいはしているはずで、廻屋という人物が実在しないことくらいその時気づけそうなものです。
それでも不審な点が出てこなかったのは、歩が廻屋の個人情報を偽装していたからではないか、と考えています。歩は世界レベルのハッカーです。戸籍を含む個人記録を作り込むことも、能力的にできそうなものです。
ただしこれは作中で説明されていません。 警察が単に確認を怠っていた可能性も残ります。どちらにしても、実在しない人物が捜査対象になっていて、それが最後まで露見しなかったという事実は変わりません。
あざみがいない場所のことは、どう把握していたのか【考察】
廻屋が周囲を把握できるのは、あざみの目を通して見ているからです。ただそれだけだと、あざみが同席していない場所の他人の動向まで押さえていることの説明がつきません。
ここは歩のハッキング能力と洞察能力で補っていたと考えるのが自然だと思います。歩はナターシャ・サインで招待状を偽装し、企業のサーバーにも侵入し、証拠まで消してしまう腕前です。街の監視カメラや相手の端末など、他の媒体から相手の動向を掴み、その洞察力で導き出した推理を「千里眼」の能力として周囲に見せていたのではないでしょうか。
作中でこの手段が具体的に説明される場面はありません。ただ、歩にそれができる技術があることは何度も描かれています。
廻屋と努の関係を、解体書はどう書いているか【公式補足】
『全篇解体書』の設定資料には、廻屋渉と如月努を結びつける記述が2箇所あります。
- P45(廻屋渉の設定資料)……あざみが見ている廻屋の姿は幻影で、「如月努の体格に近い男性」として見えている。一方、映像に映る廻屋は歩本人の体型で、オーバーサイズの服で隠している
- P76(如月努の設定資料)……努は廻屋渉とそっくりな顔。そのうえで「そもそも如月歩が兄を模した姿形をあざみにみせていた説」と書かれている
ここで注意しておきたいのが、P76が「説」という言葉で書かれていることです。公式のガイドブックでありながら、断定はしてないんですよね。
考察サイトでは「廻屋は如月努をモデルにした人格」と、確定した事実のように書かれていることがあります。ただ公式資料を読む限り、そこまで言い切られてはいません。 なのでこの記事では【公式補足】の範囲を、「解体書がこう書いている」ところまでに留めます。
そしてもうひとつ大事なのが、P76の書き方の主語が「如月歩」であることです。「廻屋という人格が如月努をモデルにしている」ではなく、「如月歩が兄を模した姿形をあざみにみせていた」。誰が誰の姿を見せていたのか、という構図で書かれています。ここは後の節でまた解説します。
本編にも、廻屋と如月努を結びつける描写が置かれています。プレイヤーの目に見える形になっているのが第0話です。
あざみが初めて眼鏡をかけてセンター長を見ると、廻屋の後ろに影が見えます。 この影はベレー帽をかぶっていて、作中で努が写真でかぶっているものと同じ形です。名前が示されるわけではありませんが、如月努の影と見て間違いないと思います。

つまりゲームの一番最初、まだ何の事件も起きていない段階で、「廻屋の背後には如月努がいる」ことが画面で示されていたわけです。しかも廻屋が首から下げている飾りは、努のベレー帽の飾りと同じ物です。
1周目では「あの影なんだったんだろう?」って流してしまってたんですが、真相を知った2周目で見ると、実は真相に近い答えを最初に見せられていたことが分かります。
ただし、この影だけで結論は出せません【考察】
念のため書いておくと、この影だけで「廻屋は努を模した人格だ」と証明できるわけではありません。画面に映っているのは、廻屋の後ろに努の影が見えた、という事実だけです。
別の読み方もできます。今回の一件はそもそも努の無念を晴らすための計画なので、あざみが無意識のうちに努の姿を見てしまっている、という解釈です。あざみの念視は歩の推理を可視化したものだと富入が説明していますから、そこに歩の中の努が混ざったとしても不自然ではありません。歩自身の記憶が影として出てきている、という読み方も同じ筋です。
そしてこの読み方は、解体書が併記しているものとほぼ同じです。P76の「歩が兄を模した姿形をあざみにみせていた説」は、まさに「あざみに見えている姿は、歩が用意したものだ」という話だからです。勝手な別解ではなく、公式が並べている読みのひとつということになります。
どの読み方でも「廻屋と努が結びついている」ところまでは共通します。ただその結びつきが「独立した人格が努をモデルにしている」という関係なのかは、ここでは決められません。 本編でも富入が推測の形で触れるだけで、断定はされていません(この台詞は後の節で扱います)。
なお、あざみの側にも努の痕跡がいくつも置かれていますが、そちらは「廻屋と努の関係」ではなく、あざみがどういう人格として歩に作られたのかに繋がる話なので、後の章で扱います。
廻屋は副人格なのか、歩が演じた役なのか【不明】
ここが、この作品でいちばん意見が割れるところだと思っています。
多くの考察では、廻屋は如月歩が作り出した副人格のひとつとして扱われています。ただ本編を見返すと、廻屋が独立した人格だとは一度も明言されていません。
あざみが独立した人格であることは、ほぼ確定している
あざみのほうは、根拠がはっきりしています。記憶の断絶があるからです。
- 昔の記憶を思い出せない(スワンボートを見て「誰と乗ったんだっけ?」など)
- カードを誰に貰ったか覚えていない
- 歩の存在を認識できていない
- 自分が念視で見ていると思っているものが、実は自分自身の記憶
歩自身も「あざみは…あの子は何も知らない」と、自分とは別の存在として扱っています。
第0話でセンターの本棚に「鬱による抑圧と解放」「精神分裂との向き合い方」が置かれていたことも合わせると、歩は幼少期から「頭の中がうるさい」と感じるほどの状態を抱えていて、そのうえで何も知らない独立した人格としてあざみを意図的に形成した、という筋が見えてきます。
ただし、この本棚から分かるのはそこまでです。 廻屋まで独立した人格だったかどうかは、ここからは判断できません。
対して廻屋には、あざみのような断絶がない
廻屋の場合、状況がまったく違います。
- 歩の過去も、兄・如月努のことも、SAMEZIMA管理人の計画も把握している
- 歩との間に記憶の断絶を示す描写がない
- 歩を別人として認識したり、歩と会話したりする場面もない
- 廻屋自身が「自分は歩とは異なる人格だ」と述べる場面もない
それどころか、廻屋はあざみが単独で入ったクローゼットの存在を知っていて、会ったことのない野村を「聡明な女性だと思いましたが」と評し、正体を知らないはずの管理人を「彼に」と男性だと断定します。 知らされていた、というより最初から歩の頭の中にあった情報がそのまま出ている、という見え方です。
また、廻屋が黒幕であることがあざみの解体で判明した際、廻屋は「いつも兄と話していた噂やオカルトの話を当時の私はよかれとしていたのです。今思えばおぞましい」と話す場面があります。これで廻屋に努が生きていた頃の記憶があることになります。ただこれが歩を通して廻屋がみていた世界なのか、廻屋を演じている歩自身の言葉であるかは分かりません。
名前そのものが答えになっている
今さらですが廻屋渉は「めぐりや あゆむ」と読みます。
- 如月歩……きさらぎ あゆみ
- 廻屋渉……めぐりや あゆむ
もはや名前が1音しか違いません。 しかも「渉」という字は、さんずいに「歩」と書きます。名前の中に「歩」がそのまま残っているわけです。
姓を変えて、音を1つずらしただけ。歩は自分の名前をほとんど隠していません。 これは別人格に与えた名前というより、自分が名乗るための偽名の作り方に近く思えます。
「兄」という呼び方は、どちらを支持するのか
廻屋が、最終盤でこう言います。
私の良き理解者であり、兄の望んだ私の…
廻屋が、如月努を「兄」と呼んでいます。
もし廻屋が「努を模して作られた独立の人格」なら、努は自分の元になった人物であって兄ではないはずで、「彼」とでも呼びそうなものです。その意味では引っかかる台詞に見えます。前の章で見たとおり、解体書の書き方は「歩が兄を模した姿形をあざみに見せていた」でした。主語は歩です。 この構図で読むなら、喋っている中身は歩なので、努を「兄」と呼ぶのはむしろ自然ということになります。
つまりこの台詞は「兄が望んだ、私(歩)の姿」と読むのが素直で、歩が歩の立場で喋っているように見えます。解体書の書きぶりとも噛み合う読み方です。
音楽が、最初から答えを言っている【公式補足】
『全篇解体書』のP142、作中音楽の解説ページに、見逃せない記述があります。まず全体について、こう書かれています。
すべての曲のどこかにMeguriyaのモチーフ、もしくはモチーフのアレンジしたものが入っています。廻屋はすべてを仕組んでいる存在であるためです
「Meguriya」というのは、あざみのところに廻屋から電話がかかってくるときの着信音です。そしてその「Meguriya」の曲紹介には、こうあります。
廻屋は如月歩が作った架空のキャラということで、ベース音(音楽の基礎部分)を限界までスカスカにしてあります
存在の土台がない人物を、音の土台がない曲で表している。 ここまで来ると伏線というより、作品の設計思想そのものだと思います。架空のキャラであるということは、あくまで「役」であって「人格」ではないと読み取れるからです。
廻屋渉は「キャラクターである」
ここで一番注目したいのは、「如月歩が作った架空のキャラ」という言い方です。この言い回しは本編にもあり、富入が「歩はまず象徴的な存在として架空のキャラクターも作った。それが廻屋渉。恐らくこのキャラクターは兄をモデルに創り上げたのでしょうね」「最後に歩は福来あざみという無垢な存在を作った…」といっている場面があります。
設定資料のP76は「歩が兄を模した姿形をあざみにみせていた説」と、わざわざ「説」と留保していましたが、この音楽解説と富入は廻屋渉を「キャラクターである」と断定しています。
しかも音楽解説部分は廻屋の正体を論じている箇所ではありません。 「なぜベース音をスカスカにしたのか」という作曲上の理由を説明するために、前提として当たり前のように書かれているだけです。議論の対象になっていない前提こそ、その資料が本当に採用している立場だと思います。
「架空のキャラ」は、独立した人格というより創作物の側の言葉です。廻屋は歩が「創り上げた」人物であり、あざみは歩が「存在を作った」人物です。こうしてみるとやはり廻屋という人格は存在せず、歩が「廻屋」というキャラクターを演じている説がしっくりきます。
二つの解釈
1. 廻屋も歩から生まれた副人格である
廻屋には独自の口調と立場があり、あざみや周囲の人物には歩とは異なる人物として現れます。そのためあざみと同じく歩が作り出した別人格だと解釈できます。ただし、あざみのような記憶の断絶も、歩を別人として認識する描写もありません。もっとも、これだけで副人格説を否定することはできません。廻屋が、努が生きていた頃から歩の中にいた人格だったとしたら説明がつくからです。
この説を取るなら、廻屋の千里眼は「あざみの内側から、あざみが見ているものを見ている」ことになります。同じ形で歩の行動も内側から見ていたのだとしたら、表に出ていない間の記憶が途切れないのも当然ということになります。第0話の本棚に「精神分裂との向き合い方」が置かれていることからも、歩が幼い頃から複数の人格を抱えていた可能性は示されています。そのうえで復讐という目的を歩と共有していたなら、二人は協力関係にあったといえます。つまり断絶がないことを、そのまま「別人格ではない証拠」として使うことはできません。
2. 歩本人が「廻屋渉」という人物を演じていた
センターを運営し、あざみを導くために、歩が「センター長・廻屋渉」という役を作って演じていたという解釈です。こちらなら、廻屋が歩の過去と計画をすべて知っていること、記憶の断絶がないこと、歩を別人として認識する場面がないことが、まとめて自然に説明できます。廻屋の姿であざみと会話する場面も、独立した副人格の証明にはなりません。センターの内装そのものが幻影だったわけで、あざみの内面で、歩が「廻屋」という役を通してあざみを導いていたとも読めるからです。
現時点での整理
- あざみが歩から分かれた人格であること……作中でほぼ確定
- 解体書が廻屋を「如月歩が作った架空のキャラ」と書いていること……公式でも補足あり
- 廻屋が独立した副人格であること……未確定
- 廻屋が歩の演じた役だったという説……根拠のある考察。公式資料の言葉づかいもこちら寄り
- 最終的にどちらなのか……明言はされておらず不明
本編の描写だけを見ると、廻屋が独立した副人格だと明言される場面はどこにもありません。記憶の断絶もなく、歩を別人として認識する場面もなく、廻屋だけが持つ能力もない。そこへ『全篇解体書』の「如月歩が作った架空のキャラ」という一文が加わります。
この記事としては、廻屋は歩が作った架空の人物だったという説が強いとみます。 歩があざみと接し、計画を進めるために用意した「センター長・廻屋渉」という存在。そう読むほうが、本編の描写とも公式資料の書きぶりとも噛み合います。
ただし「廻屋は副人格ではない」と断定はしません。 音楽解説の一文は人格構造を厳密に定義したものではありませんし、本編に決着をつける台詞もないからです。廻屋が努の存命中から歩の中にいた人格だった、という読み方も潰しきれてはいません。決定的な証拠がない以上両方の可能性は残しますが、役だったという読みのほうが有力、というのがこの記事の立場です。
SAMEZIMA管理人は独立した人格ではない【公式補足+考察】
管理人を4人目の人格として書いている考察も見かけますが、これは違います。ただ「管理人=廻屋がすべて演じていた」というのも不正確で、管理人という「役」を、場面によって別の担当者が引き受けているというのが実態に近いです。
- ジャスミンと対峙した管理人は、黒沢のマスクを被ったジマーでした(『全篇解体書』のイラスト集と公式Xの投稿でそれが確認できます)。このときあざみはセンター内で廻屋と脳内会話していたため、廻屋が管理人としてジャスミンと対峙することは物理的に不可能です
- SAMEZIMAサイトの運営(投稿やカウントダウンの更新)は歩・または廻屋が担当していたと考えられます
- それ以外の場面での管理人の振る舞いも、歩と廻屋のどちらかが担っていた可能性が高いです
つまり管理人は独立した意識ではなく、あくまで「SAMEZIMA管理人」という、歩の計画のために複数の担当者が状況に応じて引き受ける「役」ということです。
まだ分からないこと【不明】
- 廻屋が独立した副人格なのか、歩が演じた役なのか(前の節のとおり)
- 人格交代の厳密なルール。場面ごとに「今誰が表に出ているか」を特定できない箇所があります
- あざみという人格が生まれた正確なタイミング
- ジマーが歩の計画にどこまで自覚的に協力していたのか
如月歩の計画と目的
結論:兄の名誉を汚した全員を同じ目に遭わせるという復讐
歩の計画は、要するに兄・如月努を追い詰めた全員への復讐です。ただ、その「全員」の範囲がとても広く、実行手段も組織的で大規模なため、単純な私怨ではなく社会規模の攻撃になっているところが特徴です。
すべての起点は上野天誅事件【作中確定】
歩の兄・如月努は、7年前の上野天誅事件の犯人として世間から吊し上げられました。作中の描写を並べると、次のことがはっきりします。
- 本当の犯人は5ソサエティ。彼らは野村健吾を自分たちの標的だと誤認し、取り押さえた際に誤って死亡させてしまいます
- その罪を、5ソサエティは如月努になすりつけました
- 警察は努が無関係だと把握していた。野村朋子と飲食店にいたアリバイが、防犯カメラで確認されています
- にもかかわらず警察は事件をもみ消し、努は世間の攻撃と警察の沈黙のなか、事件発生から3か月後に自ら命を絶ちました
努は「オカルト研究者」というレッテルひとつで、他人が起こした事件の罪を着せられ、警察に見捨てられ、家族と、好きだった価値観を守れないまま追い詰められて死んだわけですね。犯人はわかっているのに警察は動いてくれない、SNSや現実世界での誹謗中傷はとまらない、そして家族や周りに被害が及び始める…。辛かったでしょうねぇ…。
この部分は『全篇解体書』の初版に誤りがあります【公式補足】
上野天誅事件については、公式ガイドブック『都市伝説解体センター 全篇解体書』(2026年4月21日発売)のP42に誤記があり、発売直後にVジャンプ公式サイトで正誤訂正が出ていますので、念のため記載しておきます。
【誤】世直し系動画配信者である5ソサエティが上野の公園で殺人を起こす。殺そうとした相手は如月努だったため、人違いの殺害だった。
【正】世直し系動画配信者の5ソサエティが野村健吾をターゲットだと誤認。取り押さえた際に誤って死亡させ、罪を如月努になすりつけた。
つまり5ソサエティは、最初から野村健吾と如月努を殺そうとしていたわけではありません。 誤って野村健吾を死なせてしまい、そのうえで罪を努に着せた、というのが正しい流れです。ちなみに5ソサエティの本当の標的が誰だったのかは不明なままです。
ここは物語の動機に直結する部分なので、間違えると歩の復讐の意味合いまで変わってしまいます。努は、野村健吾殺害の罪を着せられた被害者です。歩が5ソサエティに向けた憎しみの重さも、それを踏まえたほうが腑に落ちると思います。
兄が残した「予言」【作中確定】
如月努の日記の裏表紙には、こう書き残されていました。
予言はいつか現実になる。期限さえ決めなければいつか叶うからだ。グレートリセットを起こすんだ。またいつか噂を追ってオカルトの話をしよう。笑って話せると時が来る。これは予言として残しておこう
これは努にとって、「妹の歩とまた、オカルトや噂話を笑ってできる日が来てほしい」という願望でした。しかしその後、努は耐え切れず自ら命を絶ちます。兄妹でまた笑ってオカルトの話をする日は、二度と来ませんでした。
ここで大事なのは、「グレートリセット」という言葉自体は如月努が生前から使っていたという点です。本も書いてますしね。ただし努にとってのグレートリセットは、周囲の状況や価値観が変わり、歩と再び穏やかにオカルト話が話せる未来── そういう意味合いに近いものだったはずです。歩はその言葉をそのまま受け継ぎましたが、実際に起こしたグレートリセットは、兄の願望とはまったく別物でした。兄の言葉を借りて、歩は別の目的を実現させたわけです。
計画の骨格【作中確定】
- SAMEZIMAサイト……イルミナカードを紹介し、都市伝説や陰謀・噂話の交差点になる場を作る
- 都市伝説解体センター……あざみとジャスミンを事件現場に導き、5ソサエティの各員に接触させる装置
- ナターシャ・サイン……歩が自作したハッキングツール。招待の偽装、社内サーバーへの侵入、証拠の削除まで幅広く使われます。廻屋も使用可能です
- 5ソサエティを順番に追い詰める……面子と順番は、栄子→きのこ→山田→眉崎→黒沢
- グレートリセット……暗号化されていた個人情報を含む、社会全体の情報を大衆の面前に晒す最終攻撃
管理人の動機宣言はシンプルです。
私ハ如月努の無念ヲ晴ラシタイ
標的は3層に分かれている【考察】
歩が復讐の相手として設定していたのは、5ソサエティだけではありません。作中の行動を見ていくと、明確に3つの層が設定されていることが分かります。
- 5ソサエティ全員……兄を死に追いやった直接的な原因を作った配信グループ
- 事件を隠した警察と関係者……兄のアリバイを知り犯人につながる証拠もあったのに動かず、事件ごともみ消した
- 便乗して努を叩いた匿名の大衆……思い込みで如月家の玄関を叩き、家族や周囲まで巻き込んで叩き続けた人たち
特に5ソサエティ全員には深い恨みがあり、個別に叩いたのち、諸悪の根源である黒沢親子の悪事を明るみに出したうえで、社会全体に制裁を加えた形です。
3つ目がこの物語の重要な論点です。歩がグレートリセットで社会全体の情報を晒したのは、この層に対して兄が味わったのと同じ「悪意に晒される目」を味わわせるためだと考えられます。単なる情報流出ではなく、「お前たちも同じ目に遭え」という報復が芯にあります。
「歩は被害者側だから正当」とは言えない【考察】
歩の復讐は、構造としては筋が通っています。それでもはっきりさせておきたいのは、「歩は被害者側だから何をしても正当」とは言えないということです。
- グレートリセットで晒された情報には、5ソサエティとも警察とも無関係な一般人の個人情報が含まれています
- 大衆を「便乗して叩いた側」として一律に標的にする判定は、歩自身が下したものです。つまり兄を叩いた大衆と同じ論理で、歩は大衆を裁いています
- あざみやジャスミンを含め、協力させられた人たちには復讐の理由が説明されていません
歩は、兄を追い詰めた側の論理 ── 決めつけと、一律の断罪 ── を、そのまま自分の復讐に使ってしまっているということですね。そして5ソサエティを陥れるため、多くの人を操って襲わせたり協力させたりしてたわけですが、歩が手を貸さなければ不満を抱えながらも平穏に過ごせていた人もいたはずなのです。ここも歩の罪の1つだなと私は思っています。
まだ分からないこと【不明】
- 歩が計画を始めた正確なタイミング
- ジマーをはじめ、歩の計画に何人関わっていたのか、どこまで計画を知っていたのか
- グレートリセットで晒される情報の範囲が、どこまで設計されていたのか
各話の事件は、歩が用意した舞台だった
依頼はすべて、歩が用意した舞台だった【作中確定】
各話であざみが受ける依頼は、一見バラバラな都市伝説の相談です。闇から覗く目、鏡像から迫る死、辺獄への階段、漏れ拡がる邪悪、罪人の影…。チュートリアルの0話を除く全話に共通して、必ず5ソサエティの誰かが登場します。 そしてその接触経路は、毎回あざみです。
つまり各話の依頼は、あざみを5ソサエティのメンバーに引き合わせるために歩が用意した舞台でした。都市伝説の解体はそのための口実です。そしてあざみとメンバーを引き合わせるために、歩は周りを翻弄してわざとすべての事件を引き起こしています。
歩は一度も自分の手で手を下していない【考察】
そしてここがこの計画の一番いやらしいところだと思っています。
歩は5ソサエティを直接殺していません。 代わりに、それぞれのメンバーに恨みや事情を抱えた第三者を見つけ出し、実行に向かうよう誘導しています。
- 第1話・栄子……美桜が包丁を持って襲いかかります。美桜は「あざみはすごいよ。言われた通りにしたら言う通りになったよ」「わたしのカルテは無かったの」と語ります。あざみの顔をした歩が美桜に接触し、カルテが栄子の部屋にあると吹き込んでいたわけです
- 第2話・きのこ……ヒナタがきのこを襲います。廻屋は「きのこさんが鏡に細工することを聞いて、屋敷サラは凶器が人目に晒されると思ったのでしょう」と説明しますが、サラがきのこのやらせを知る手段はありません。 教えたのは歩です
- 第3話・山田……野村朋子(木村)が兄の復讐のためにツアーを企画します。彼女は「きっと上手く行くって言ったのに…!!」と口にします。歩が「うまくいく」と背中を押していたことが分かる台詞です
- 第4話・眉崎……西谷と配達員の伊藤が眉崎を呪う構図。第6話の西谷宅で、西谷が廃墟の教会で歩と接触していたことが分かり、そこには「復讐の仕方を教えてくれた。手伝ってもくれた」と記されています。西谷は伊藤を同じ目的を持つ「同志」と呼んでいたことから、恨みを抱えた二人を見つけ出し引き合わせて実行させたのが歩です
- 第5話・黒沢……こちらは殺害ではなく、社会的な破滅です。ジマーを使い証拠を集め、グレートリセットで晒す形で追い詰めています
歩がやったのは、誘導と情報提供だけ。 手を下したのは全員、5ソサエティに傷つけられた側の人間でした。
これは責任逃れというより、歩の復讐観そのものだと思います。5ソサエティは「悪を裁く」と称して野村健吾を取り押さえ、死なせました。歩はその構図をそっくり反転させて、今度は彼らが「裁かれる側」に回るよう仕向けているわけです。
5ソサエティの痕跡が置かれている場所【作中確定】
「この人が5ソサエティだった」と分かる証拠は、各話にさりげなく置かれています。
- 栄子……SNSに「栄子ってあのエーコ?」という書き込み。過去アカウントが
eico_5S - きのこ……不忍池のスワンボートに「5Sきのこ参上!」の落書き。第3話で、第2話の人物の過去が出てくる作り
- 山田……盗んだ小判をSNSで自慢して炎上しており、あとから小判を盗んだ犯人が山田だったと分かる。異界駅の壁に「腕にアザもつ罪人」と表示されたときには「アザって……嘘だろ……」と動揺する
- 黒沢……「元人気配信者グループのリーダーからIT社長なんて自伝かけるレベル」という書き込み。自宅の玄関に飾られた銀と金の盾は、どちらも宛名が「ファイブ・ソサエティ様」
山田のアザの場面が個人的にいちばん上手いなーと思っています。なぜなら山田の腕にアザはないからです。 アザがあったのは黒沢で、それが分かるのは第6話の証拠映像です。つまり山田は、自分のことでもないのに反応してしまっているわけですね。1周目はアザに反応した山田の腕にアザがなくて「あれ?」ってなったんですが、最後に綺麗に伏線が回収される形でしたね。
眉崎潤だけ、話の中に痕跡が置かれていない【作中確定】
まず前提として、眉崎潤が5ソサエティの一員であることは確定しています。 5ソサエティが野村健吾を襲撃している動画に、眉崎がそのまま映っているからです。解体書でもメンバーである旨の記載があります。
ただ、眉崎だけ他のメンバーのような5ソサエティであったことの痕跡を見つけることができません。
栄子には過去アカウント、きのこには落書き、山田には盗んだ小判、黒沢には盾がありました。それぞれの話の中に「この人が5ソサエティだった」と後から気づける物が仕込まれています。ところが眉崎の話には、それに相当するものがありません。SNSを見ても、健康食品で成功していることと、悪質なクレーマーであることぐらいしか分かりません。
4話で回収されないまま残る疑問は救急隊員の「チッ…。また眉崎の関係者かよ。アイツどうなってんだマジで」という台詞です。眉崎の周辺で以前から何かが起きていたことを匂わせますが、結局なぜ隊員が眉崎をよく思っていないのかは、最後まで語られませんでした。
5人とも同じ作りで痕跡が置かれているわけではないという意味で、第4話だけ手触りが違うのはたしかです。
廻屋はなぜあざみを事件に参加させたのか
結論:あざみは「兄が望んだ自分の姿」を残した人格だった
歩が本気で復讐するだけなら、廻屋人格だけで完結できたはずです。情報整理もハッキングもSAMEZIMAの運営も、すべて歩と廻屋の内側で回っていました。にもかかわらず「福来あざみ」という人格を新しく作り、事件の現場に立たせた理由は何だったのか。
あざみには少なくとも4つの役割があったと考えられます。
役割1:兄が望んだ「自分」を残しておくため【考察】
復讐に踏み切った時点で、兄・努が妹に見ていた「他人を信じようとする優しい人間」という姿は、歩自身の中では成立しなくなります。
それでも歩は、その姿を消したくなかった。だから別の人格として、自分の中に確保した。それがあざみです。
「憎しみに飲まれないための安全装置」というより、兄が見ていた自分を保存しておきたかった、という動機の方が近いはずです。日記に残されたおまじないの癖をあざみが今も持っていることからも、歩が兄との記憶を人格ごと手放していないことが分かります。
最終盤、廻屋があざみにこう語りかけます。
あなたは憎しみや絶望の外側にいる、本当に優しい人間です…。私の良き理解者であり、兄の望んだ私の…
「兄の望んだ私の(姿)」と呼ばれているのは、あざみです。歩が自分の口で、あざみが何のために存在しているかを言っているわけです。
あざみが努と同じ鞄を背負っていることも、考え込むときに頬を押さえる癖を持っていることも、同じ方向を指しています。この癖は努の日記に出てくる「ほっぺを抑えて落ち着くおまじない」、つまり努が幼い歩にしてあげていた仕草そのものです。あざみは、兄が触れていた頃の歩の姿を残した人格ということになります。
役割2:兄の場所に戻るための「顔」【考察】
如月歩として動けば、上野天誅事件の関係者だと知られる危険があります。かといって廻屋は実在しない人物で、しかも車椅子と仮面で身元を隠している立場なので、こちらも表には出せません。そもそも実在するのは如月歩ひとりで、あざみも廻屋も名前を持った人格でしかありません。それでも人前に立って5ソサエティの関係者と会う担当は必要でした。そこで用意されたのが、「福来あざみ」という名前と経歴を与えられた人格です。
あざみは「犬神大学の情報学部3年生」と名乗ります。そして第6話であざみが辿り着く如月努の研究室も、同じ犬神大学にあります。努はこの大学の助教でした。ここで注目したいのは、学部ではなく大学名の方です。
つまり歩は、兄が働いていた大学の名前をあざみに名乗らせているわけです。あざみは最初から「兄がいた場所に戻る」ことを織り込んで設計された人格だった、と読めます。
なお、情報学部を名乗るわりにあざみのIT知識が乏しいことは作中でも不自然に描かれていますが、これは肩書きが歩による設定でしかないことの傍証です。学部そのものは本筋ではないと考えています。
役割3:兄の理想像に、復讐の答えを聞くため【考察】
録画された管理人が、あざみにこう問いかける場面があります。
アナタハドウシタイ?私ハ如月努の無念ヲ晴ラシタイ
これは歩が、自分の復讐計画を「兄の理想像であるあざみ」に問うている場面です。あざみの答えは「私はあなたを止めたい」でした。このときの歩の心境は、ひとつに絞れないと思っています。兄が望んだ自分なら何と答えるのか、その答えを知りたかった。同時に、止めてほしい気持ちもあった。
それでも歩は計画を続けました。答えは受け取ったけれど、憎しみの方が勝ってしまい、兄の理想どおりにはいかなかった。そういう場面として読むのが一番自然です。
あざみは復讐を止める装置ではなく、歩が「兄の理想の自分」と答え合わせをするための相手でした。そして歩は、その答え合わせに敗れています。
役割4:計画のあとに残る「自分」として【考察】
グレートリセットのあとも、あざみは生き続けています。この点はエンディングの解釈に直結するので、後半で改めて扱います。
あざみはいつ作られた人格なのか【考察】
第3話で、あざみは上野天誅事件の話題になったとき、こう漏らします。
(そんなに有名な事件なのか… 私 なんで知らないんだろ)
上野天誅事件は、如月努が犯人として世間に吊し上げられ、大きく報道された事件です。7年前とはいえ、当時を生きていた人間なら知らないほうが不自然です。しかもあざみは、自分が知らないことを自分でも不思議がっています。
ここから考えられるのは、あざみという人格は、上野天誅事件より後に作られたのではないかということです。事件が起きた当時、あざみはまだ存在していなかった。だからニュースを見ることも、世間の空気を体験することもなかった。つまりあざみは、この7年のあいだに作られた人格という読みになります。
作中でこの台詞は、あざみの「情報学部なのにITに疎い」といった知識の欠落と同じ並びに置かれています。1周目では天然な性格として流れる場面ですが、真相を知ってから見ると、あざみに与えられなかった記憶の範囲を示す手がかりになっています。
ただし、あざみが事件より前から存在していて、歩がこの事件に関する記憶だけを渡さなかった、という可能性も残ります。兄の死に直結する事件なので、あざみに知らせない理由はむしろ十分にあります。
さらにもうひとつ、幼少期からいたけれど、表に出てきたのが最近だったという読み方もできます。
第5話、黒沢の家からの帰り道で、あざみは「あれ…なにここ…真っ暗…なのにすごくうるさい…」という場所に迷い込みます。そこにいる「???」は「見たくない…聞きたくない…怖い…辛い…助けて…」と訴えていて、あざみはこう語りかけます。
そうですね、酷くうるさいですよね。私と静かなところに行きましょうか?
この「???」は幼い頃の歩です。あざみが幼い歩を宥めている場面だと読むなら、あざみという人格は、その頃から歩の中にいたことになります。
この読み方なら、上野天誅事件を知らないことも説明がつきます。人格として存在してはいたけれど、表に出て社会に触れる時間がほとんどなかったから、報道も世間の空気も入ってこなかった、というわけです。「いつ生まれたか」と「いつ表に出るようになったか」は別の話になります。
どの読み方を取るにしても、あざみの記憶が歩によって取捨選択されているという点は変わらないですけどね。
まだ分からないこと【不明】
- あざみという人格が生まれた正確なタイミング(幼少期から存在していたのか、上野天誅事件のあとに作られたのか)
- 歩が最初からあざみを復讐の共同実行者として設計したのか、途中で役割が広がったのか
- 「犬神大学の情報学部3年生」という設定が、実在の学籍として偽装されていたのか、認識の中だけの設定だったのか
ゼロ枚目とイルミナカードの正体
イルミナカードは予言ではなく「予告」だった【作中確定】
作中でイルミナカードは、事件を言い当てる不気味なカードとして登場します。第2話であざみが持っていたカードを見たジャスミンが「あんたそれイルミナカード?!」と驚く場面が、その不気味さを決定づけます。
最初は予言のカードとされていたイルミナカードですが、第3話の最後、ジャスミンは富入への報告でこう結論づけています。
イルミナカードは予言ではなく、予告のカードだと思われます
そして第6話で、イルミナカードを作ったのがSAMEZIMA管理人だったことが示されます。管理人の正体は廻屋渉、さらにその正体は如月歩でした。
各話の事件は、偶然カードどおりになったのではありません。歩がカードを作り、ジマーや事件関係者を利用して、その内容に重なる事件を計画・誘導していたわけです。カードが当たるのは、カードを置いた本人が事件を起こしているから。予言ではなく、これから実行する計画の予告でした。当たるのは当然ということですね!
掲示板にも「イルミナカードを作ったのは管理人」という書き込みがあります。全6枚がSAMEZIMAで紹介されていたのも、事件が起きる前から「これから何が起きるか」を提示しておくためでした。
ではゼロ枚目とは何なのか【作中確定】
第6話の掲示板に、こんな書き込みがあります。
確かイルミナカードの元になったカードってやつ?
ゼロ枚目とか言われているカードか
ゼロ枚目は、イルミナカードの元になったカードです。そしてこれは、7年前の上野天誅事件の現場に置かれていました。
つまり、上野天誅事件の現場に残されていたカードがゼロ枚目で、それを元にイルミナカードが作られた、という順序になります。
ここからは考察ですが、その流れはこう読めます。
- 上野天誅事件の現場に、ただのカードが残された。これがゼロ枚目
- 歩がそれを意趣返しとして作り変え、イルミナカードを作った
- 以降、事件の予告として使い始めた
つまり歩はわざわざ、兄を殺した連中が現場に残した記号を模して、彼らを狩る道具を作ったということですね。実務上そんな必要はどこにもありませんので、完全に意思表示です。お前たちがしたことをそっくりそのままお前たちに返す、という。
ゼロ枚目は「消された」カード【作中確定】
同じ第6話の検索で、こんな書き込みも見つかります。
変なカードについてのスレッドが立ってたはずなんだけどなくなってる。あれやっぱ誰かが消したんじゃないか?
ゼロ枚目に関する情報は、ネット上から消されています。同じ構図は作中で何度も繰り返されます。「ハッピー777億円流出事件」のスレッドが消え、「ナターシャ・サインによるハッキング事件」の記事も出てきません。
ゼロ枚目が消されているということは、それが5ソサエティの犯行を示す物証だったということです。だから警察は事件ごとクローゼットに入れ、カードの情報も封じました。歩にとってゼロ枚目は、兄が濡れ衣を着せられた理由そのものです。
ジャスミンはどこでゼロ枚目に辿り着いたのか【作中確定】
第6話で、廻屋がふと立ち止まる場面があります。
ゼロ枚目。ジャスミンがどこでその情報にたどりついたのか
ジャスミンは、歩が黒沢の家から回収したHDDの中身を知りません。にもかかわらず、消されたはずの情報に到達している。廻屋が、その出所を測りかねている場面です。
答えは、ジャスミン自身もクローゼットに入って調べていたからでした。
しかもジャスミンはただ調べただけではありません。資料が破棄されても他の人間が真実に辿り着けるように、別の場所へ資料を差し込むなどして情報を残していました。 あざみが最終的に真相へ到達できたのは、ジャスミンが逃がしておいた資料があったからです。
まだ分からないこと【不明】
ゼロ枚目カードの絵柄がどんなものだったのかは、最後まで明かされません。 本編で描かれることはなく、『全篇解体書』にも記載がありませんでした。「イルミナカードの元になった」以上の情報は、現時点でどこにもありません。
そのほか、次の点も未回収のままです。
- ゼロ枚目の現物が、いまどこにあるのか
- 5ソサエティがなぜ現場にカードを置いたのか
エンディングと、その後に描かれること
エピローグで描かれること【作中確定】
すべてが終わったあと、物語は海外を思わせる街並みから再開します。ドームと4本の尖塔を持つモスクのような建築が映り、外国人らしき人々の姿も見えます。具体的な国名や地名は示されません。「数年後」といった字幕も出ないので、どれだけの時間が経ったのかも分かりません。
その異国の地に、新しい都市伝説解体センターがあります。
そこへ、ジャスミンが銃を携帯して乗り込んできます。 フードを被った人物が振り向き、こう言います。
来ましたよセンター長さん
福来あざみです。そしてその場で、廻屋の人格に交代します。
そしてこの交代が、台詞と表情でそのまま描かれます。

ここ、個人的に一番トリハダが立ったところです!!最後の最後にその演出もってくるかー!!!と!!
ここまでの真相はテキストで説明される部分が多くて、読んでいる最中はどこか半信半疑なんですよね。「同じ人物でした」と言われても、頭では分かるけど実感が追いつかないというか。それを最後の最後に、人格が入れ替わる瞬間そのものを見せてくれるわけです。俯いて、顔を上げたらもう別人になっている。最初「そんなに似てないし別人は無理ない?」とか思ってた層も、ここで「ほほほほんとだ!!同一人物だ!!」となるわけですねー!あまりにもうまい。
このエピローグで確定できること【作中確定】
ここで読み取れることは、実はひとつだけです。
あざみと廻屋、どちらの姿もまだ存在している。
逆に言えば、それ以外は確定できません。歩本体が意識の中心に残っているのか、あざみの背後に退いたのか。交代が起きている以上、主人格の歩が消えたとは言えませんが、主導権が誰に移ったかまでは判断できません。エピローグがあまりに短く、材料が足りないからです。
それでも復讐は終わっていない【考察】
ただ、歩の復讐が終わっていないことは、かなりはっきりしていると思います。
理由は単純で、今回の事件もまたクローゼット行きになったからです。第6話の最後に、富入がそう口にしています。5ソサエティを追い詰め、グレートリセットで情報を全部晒したにもかかわらず、事件は結局なかったことにされました。
歩が復讐を始めた動機は、兄を死に追いやった人たちへの恨みだけではありません。都合の悪い事実を消してしまう仕組みそのものが敵でした。それなのに警察はまた同じことをやっているわけです。その仕組みが健在なまま終わった以上、歩の戦いが終わったとみなす理由がどこにもありません。
異国に新しいセンターを構えているのは、続けるつもりだからと読むのが自然です。
ジャスミンはなぜ国外まで追ってきたのか【考察】
日本の警察としての捜査は、クローゼット行きとともに打ち止めになっているはずです。それなのにジャスミンは噂を聞きつけ、銃を持って国外の新しいセンターまで乗り込んできています。
これは組織の判断ではなく、個人として追い続けた結果でしょう。追ってきた正確な理由は分かりません。事件解決のために個人的に調査を続けているのか、その後のセンターが気になるのかまでは読み取れません。
ゲーム本編後のジャスミンは小説でも描かれている
ちなみにゲーム本編後のジャスミンについては、公式小説でその後を少し読むことができるようです。
『都市伝説解体センター 断篇集』に収録されている「止まり木に休息を」は、グレートリセット後から、ゲームの数年後の場面までの空白期間を描いた一篇です。
あざみがいなくなったあと、ジャスミンは富入から依頼された子どもの護衛をきっかけに、都市伝説「テケテケ」にまつわる事件を一人で解体します。途中で「あざみに顔向けできない」という思いから事件に立ち向かい、自分は誰かの「止まり木」でいるのが性に合うという趣旨の言葉を残しているようです。
あざみを失ったジャスミンが何を考えていたのか、本名の「止木休美」にもつながる彼女の生き方が描かれた後日談ですね。「あざみに顔向けできない」という台詞から、ジャスミンがあざみを思い続けていることが分かる、素敵なエピソードです。
また、『都市伝説解体センター ノベライズ みらい文庫版 真実を暴きだせ』には、ゲーム版の結末を補う独自の描写があるようです。
こちらはジャスミンがセンターを訪れる前に、あざみたちが頭の中で交わしていた会話が描かれるほか、ジャスミンは「如月歩の復讐は終わったのに、なぜ廻屋とあざみは存在し続けているのか」と疑問を抱きます。そして、その理由に思い至ったうえで、再び“二人で一人”のあざみたちと行動をともにすることになる…。ゲーム本編で明かされなかった「あの再会の前後」が読める内容となってるようですね!
どちらも内容がすごく気になるのでそのうち買いたいと思うんですが、今はまだ未読なので紹介する程度にとどめておきます!!もちろんほかにもエピソードがいっぱいあるようなので気になった人は是非読んでみてくださいませ~。
あざみは何を覚えているのか【考察】
第6話の最後、ジャスミンと富入が答え合わせをしている場面で、歩が録画画面越しに警察へ向けてこう言います。
あざみは…あの子は何も知らない
これは二重の意味を持っていると思います。ひとつは事実の説明。もうひとつは、あざみを共犯にさせないための証言です。歩は最後の最後に、兄の理想像であるあざみを、法的にも守ろうとしたんじゃないでしょうか。
一方で、あざみが記憶をすべて失ったわけではありません。エピローグで「センター長さん」と呼びかけている以上、廻屋という存在自体は認識しています。センターが幻影だったと分かったあとなのに、あざみはまだ「センター長さん」と呼んでいる。ここが、優しくもあり、いちばん怖いところですよね。一体どういう心境なんでしょうか。
あざみに責任はあるのか【考察】
読み終えたあとに残る問いが、これだと思います。あざみはどこまで責められる立場なのか。
事実として、5ソサエティの関係者に接触して回ったのはあざみの身体です。事件が起きるきっかけを作り、現場にも立ち会い続けていました。
でも作中の描写を並べると、あざみの立場ははっきりしています。
- 歩の計画を知らされていない
- 管理人に「アナタハドウシタイ?」と問われて「私はあなたを止めたい」と答えている
- 野村にも「こんなことしてもお兄さんは悲しいと思います」と、復讐行為そのものを否定している
- 歩が警察へ向けて「あざみは…あの子は何も知らない」と証言している
あざみは一貫して、止める側に立っていました。 計画を知らないまま利用され、知った時点では止めようとしています。裁かれるべきは歩であって、あざみではない。作中はその立場を取っているように読めます。
ただし、あざみが歩と同じ身体を持つ存在である以上、ここをどう受け取るかは読む人によって変わるはずです。答えは作中で明示されませんので、各々がこういった犯罪についてどう考えるかという結論になるかと思います。
車椅子が消えている【考察】
エピローグの廻屋は、車椅子ではなく玉座のような椅子に座っています。
そもそも廻屋の車椅子は、身体的な必要から来たものではありません。歩は黒沢の自宅に侵入し、ゴムマスクで変装してHDDを回収し、第5話の終盤では取っ組み合いまでしています。歩き回れる人物が、車椅子に乗っていたわけです。
そのため車椅子は体格と性別を誤認させるための小道具として、廻屋がわざと乗っているに過ぎません。オーバーサイズの服、薄暗い面接部屋、仮面、歩けない体という設定、男性のような立ち振る舞い。これらをセットにしたとき、廻屋渉というキャラクターが完成するのです。
なので正体がジャスミンに知られた以上、隠す必要はもうありません。だから車椅子は消えた。それでも座ったままなのは、廻屋というキャラクターの在り方そのものは変わっていないということなのだと思います。もしくは廻屋が「人格」だとした場合、精神的に歩けないと思い込んでおり、廻屋の人格時だけ本当に歩けないということも一応考えられます。(思い込みで動くはずの体が動かないという現象は医学的にもあることです)
余談として、『全篇解体書』の秘蔵イラスト集、第5話のページ(P128)に、誰も乗っていない、倒れたままの車椅子だけを描いた一枚があります。背景は暗く、床しか見えません。説明の文章も添えられていません。
なので何の場面なのかは分かりませんでしたが、ただ実在しない人物のために用意された小道具が、乗り手のいないまま転がっている絵だと思うと、廻屋渉という存在の空白がそのまま描かれているようで、妙に印象に残りました。このカットだけで廻屋が歩けるかもしれないこと、廻屋が実は存在しない人物であることが示唆されているように見えるからです。
まだ分からないこと【不明】
- グレートリセットからジャスミンとの再会までの経過年数
- 具体的な国や都市
- 歩本体が意識の中心に残っているのか
- あざみが自分の意思でセンターにいるのか
- あざみの記憶欠落の正確な範囲
最後に解体されたのは、センター長だった
タイトルを回収する形になっている場面があります。作中で「解体」を主導していたのは、いつも廻屋でした。あざみが現場で情報を集め、それを廻屋が整理し、解体の筋道を示す。この役割分担がずっと続きます。
ところが終盤、あざみは初めて自分で解体を行います。 そしてその相手が、SAMEZIMA管理人 ── つまり廻屋自身でした。
センター長が一度も解体されない側にいたのは、当然です。センター長こそが、すべての事件を起こしていた張本人だったのですから。都市伝説解体センターが最後に解体したのは、センター長自身だった。 あざみが誰の指示も受けずに辿り着いた最初の答えが、自分をここまで連れてきた人物の正体だった、ということになります。
この最後の解体時だけBGMがちょっと違うのも憎い演出ですよね。クライマックス!って感じがしてゾクゾクしました!!
まだ分かっていないこと
この記事で【不明】とした点を、まとめて並べておきます。考察サイトによっては断定的に書かれていることもありますが、少なくとも本編と『全篇解体書』の範囲では確定していない部分です。
- ゼロ枚目カードの絵柄・モチーフ
- あざみという人格が生まれた正確なタイミング
- 廻屋が独立した副人格なのか、歩が演じていた役なのか
- 人格交代の厳密なルール
- ジマーが歩の計画にどこまで自覚的に協力していたのか
- エピローグの経過年数と場所
- あざみが失った記憶の範囲
ここまでのまとめ
『都市伝説解体センター』は、「同じ人物でした」という一点だけを取り出すと、よくある叙述トリックの作品に見えてしまいます。
でも実際に描かれているのは、兄を理不尽に奪われた人間が、兄が望んだ自分の姿を人格として手元に残したまま、その自分に反対されながら復讐をやり切ってしまう話です。歩は最後に自分の理想像と答え合わせをして、負けていますが、復讐自体はやり切っているのがまたすごいところ。
だいたいこういう流れって最後に主人公がとめて、最後の最後で踏みとどまる…。みたいな展開が多いと思いますが、本作はすべてが明るみに出た瞬間に、正解です!!でもグレートリセットは予定通り行いますね!!って進めちゃうのがある意味衝撃的であり、痛快でもありました。
そしてあざみたちの物語は終わっていません。事件はまたクローゼットに入れられ、あざみと廻屋は異国の地で新しいセンターを構えています。エンディング後もまだ考察の余地を残す、とてもいい終わり方だったなと思います!!
そして伏線の一覧は量が多くなったので別記事にまとめます!!こんな約23,000文字のくそ長記事書いておいてまだ書くことあるんかい!って感じなんですがまだ全然書き足りなくて…。都市伝説解体センター…恐ろしい子…。書けたらまたこっちにリンク貼っておきますのでしばらくお待ちくださいませ~~~。
▼ 都市伝説解体センターをクリアした方はこちらもどうぞ
本編の外側にある情報も追いかけたくなった人はこちらもどうぞ~。特に解体書は本編で語られてないことやゲームに使われていないイラストなどが見れるのでとてもおすすめです…。買ってよかった…。
ちなみに解体書は、現在Amazonの直販では新品が扱われておらず、書店さんの出品や中古が並ぶ形になっています。ただ定価のまま新品を置いてくれているお店もあるので、これから買う予定の方は定価1,980円を目安に探してみてくださいませ~(新品販売が確認できたサイトだけ張っておきます)
それと現時点で公式の重版告知が確認できないため、これを書いている現在(2026年9月3日)に流通しているものは初版第1刷しかないと思います。私の手元にあるものも初版第1刷でした。なんとなくレアもの持ってる感が醸し出せます(個人の感想)
▼ これから遊ぶ人・誰かに薦めたい人はこちらから
本編だけを遊ぶなら、いちばん安いのはダウンロード版の1,980円です(ニンテンドーストア)。パッケージで手元に置いておきたい場合はこちらから。
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