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今回はサンティアゴのストーリーを紹介したいと思います。我々からするとエクスティンクション編で死んだはずの彼が何故ここに?となりますが、大方皆さまの予想通りの理由で彼は生きています。(正確には生きていた、ですが…)

今回のサンティアゴのノートでARKストーリーの全容がさらに詳しくわかりますので、お時間のある方は是非是非目を通していただけたらと思います!

それではいってみましょう!

サンティアゴの記録

(※ )部分はストーリーが分かりやすいよう入れている注釈です。ストーリーに関する重要部分やゲームのメタ的な部分については太字にしています。

#01

このニューラルアップリンクには本当にうんざりだ。無意識下での思考の記録など必要ない。行動する前に、エントリーはすべて確認しておいた方がよさそうだ。分かった分かった…始めよう。

私はGenesisの現場にいる。以前はチームの一部を率いていたが、このプロジェクトは…別だ。地球上に存在していたすべてのものと人を再現する試みなど、どうやって説明すればいい?規模が大きすぎて、連邦政府がURE(※連邦政府と戦争していた組織)と連携するぐらいだ。今のは少し皮肉が過ぎたか。

これにアクセスする者へ。私はこのプロジェクトの重要性と深刻さを承知している。このメッセージをボトルに詰め込み、すべてが終わる前に船外に投げ出す時間もない。世界規模の絶滅劇に直面して、エレメント戦争で争っていた両者が協力し合うのも無理はない。ただ、生きている間にその瞬間に立ち会えるとは思ってもみなかった。

#02

こんなプロジェクトを率いようだなんて、無謀だった。確かにプロジェクトの概要を把握はしていたが、一光年先まで飛んでからようやく全貌が把握できてきた。何とか追いつこうと彼らの書類を必死に読み進めているが、自分にもユマほどの処理能力があればと願うばかりだ。…言い忘れていたが、今は彼らの内の1人の元で働いている。ユマという名のトランスヒューマン(※ホモ・デウスのこと)だ。

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10年以上前の自分が今の自分の姿を見ることさえできればよかったのだが。建前上は何年も平和が続いているが、事態は受け入れがたいほど急速に変化している。自分がなんでこんなことをするはめになったのかすら思い出せないほどだ。ついこの間まで自分を殺そうとしていた連中のために働いているなんて。

敵に言われていた内容について、テラン連邦のお偉いさんどもが今になってようやく認めた…我々の星は、もう末期状態らしい。逃亡計画のためにトランスヒューマンの手を借りるほど、否定しがたい証拠を突きつけられていたということだろう。

#03

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とんでもないスケールの話だ…決断を下すにあたって不確定要素を洗い出そうとしているが、ドツボに陥っている。自然のバックアップを作る為に必要な物など、一体どうやって算出しろと言うんだ?他の惑星に移住するときは、一体何を持っていけばいい?

そもそも我々は、まだろくに宇宙探索もできておらず、地球外生命体が存在するという証拠のアミノ酸数種やクロロフィルの痕跡すら持ち帰れていない...他にも誰かが存在するという確かな証拠があればいいんだが。 証拠さえあれば、こんな風に感じずに済む。宇宙で空を見上げて星々に思いを馳せている存在の命運は、すべて自分に懸かっているだなんて。

だが、トランスヒューマンの考えは違うみたいだ。 すまない... 私は迷信深くもなければ信心深くもないんだが...上手い言葉が見つからない。アップロードする前に少し頭を整理しよう。

#04

当初、超人間主義(※トランスヒューマニズムのこと。科学技術で人間の身体と認知能力を進化させ向上させようという思想)は現代医学を否定する昔ながらの代替医療行為のようなものだと思っていた。奇跡的に発見されたエネルギー(※エレメントのこと)があらゆるテクノロジーに力を授け、それを変わり者たちが楽しんでいるのだと。

ファヴェーラ(※ブラジルにおいてスラムや貧民街を指す言葉)でメディア放送や警察のシステムにハッキングしていた頃は、私も同じようにテクノロジーに秀でていると思っていた。しかし、彼らが脳の改造や神経機能の代替を始めたとき、私はそれらを理解しようとするのをやめた。だからと言って、取り締まりに賛同していたわけではない…自らのインターフェースポートから姿を消し、無限と交わりたいと願うなら、勝手にすればいいと思った。それが原因ですべての人が戦争に巻き込まれることになるとは想像もしていなかった。

プロジェクトパートナーのユマなら、エレメントは、より高次元の力がどこかに存在し、私たちに届けようとしている何よりの証拠だと言うはずだ。 仮にそれが星々からの神秘的な贈り物なのだとしても、私たちはそれを無下にし、故郷を追われたということになる。私に至っては、それを動力源とする武器の設計に携わっていたのだ。

#05

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ユマにチームリーダー数名の選出を迫られている。そこでユマの候補者名簿をスキャンしてみた。すると、「エネルギー化合物の環境移行」というアレシャの論文が目に飛び込んできた……私は、戦場を永久に汚染してしまった軍需品を設計したのは自分だという事実に、夜も眠れずにいる。だからこそ中央司令部に推薦する人物には、エレメントによる汚染からバイオームを守る方法をしっかりと理解しておいてもらいたい。

アレシャはテラン連邦軍にロが利くという点も、デメリットにはならない。それに、エングラム復元プロジェクトはやり手のヨンキが担ってくれれば安心だ。 熱心な人道主義者だから、あの才能は天賦のもので能力強化によるものではないと断言しても差支えないだろう。ユマや彼女の仲間に反感を持っているわけではないが、ブレインバンクの作成は普通の人間に任せたいところだ。

今回は…アップロードを待った方がよさそうだ。むしろ、私が責任を持てる新規エントリーを除いて、今後のジャーナルはすべてローカルに保存することにしよう。

#06

正直に言うと、このプロジェクトは名前ですら気に障る。 「Genesis」など、超人間主義者が私たち異教徒を改宗させるために持ち出す、恐れと憎しみを請うような神性をはき違えた者が使う言葉だ。(※Genesis=創世記という意味)

これが公開されれば、私たちを黙らせるための暴徒が組織されるだろう。 人々の先祖の骨は掘り起こされ、文化的な感受性を持たない研究者によってDNAシークエンシングがなされたと知った時、人々はいい反応を示さないだろう。地球に存在したことのあるすべての人間のアーカイブを作りたいと知れ渡ったら…?

#07

この前の出来事をきっかけに、私は超人間主義者の考え方を理解しようとしている…このプロジェクトを成功させるのであれば、私たちの中の狂信を大義に変える必要がある。自分たちの子供に信じさせることのできる真の信奉者にならなければ。

この夢物語のために、人々やその子孫にまで人生を捧げるよう説得する方法は他にない。この作業は、遠い子孫がその中で祈ることができる大聖堂の基礎を組み立てるようなものだ。その日が来るまで、地球またはその他の場所で生活を再構築するこの計画は、私たちに残された最後の宗教となるだろう。

私たちのアーカイブを最終的にどちらに移すことになるかは分からないが、星間コロニー船(※Genesisの舞台である宇宙船)や衛星の箱舟の群れ(※ARKの島々のこと)が打ち上がる瞬間に、間違いなく私は生きてはいない。したがって、将来その瞬間に立ち会う人々のため、何を犠牲にしてもプロジェクトを成功させなければならない。

#08

私は何週間もの間、生態系の包含について総意を得ようとする生態動物チームから抜け出せずにいた。自然を再現するために必要な陸生生物の最小量はどれほどか?残ったのが人間、鶏、ミツバチ、ナマズ、藻類、アルファルファ(※スプラウトのこと)、酵母、そしていくらかのうずら豆だけだとしたら、それで地球上の生命を救ったと言えるだろうか?

これまでに存在したあらゆる生命体を保護することまでは期待していないが、初めの段階で見落としていた可能性を考慮すると、絶滅したかどうかによらず、可能な限りバックアップしておくのが賢明だ。
ヒト科動物が動物を飼いならし始めた時代に翼竜がまだ存在していたとしたら?その場合、環境災害を乗り切るためのより良い装備を整えた文明が形成されていた可能性がある……

これは、過去に存在したすべての人間の心と体をアーカイブするため、先行グループが用いているものと同様のアプローチだ。一部の女戦士により良い視力とより強力な免疫系があったとしたら?彼女がマンモスを飼いならしていたらどうだろうか?

#09

バイオームの保全の行き詰まりを解決する唯一の方法は、ヨンキにGenesisエンジンの変種を作ってもらうしかないという結論にようやく達した。 予定よりもはるかに前倒しで雑なシミュレーションを頼むことで、彼のチームに大きな負担をかけることは理解しているが、物理的なものを構築するコストと比較すれば大したことではない。

彼のシミュレーションがあれば、より極端な案を除外し、ほぼすべての人が同意できる居住地のバランスを見出すことができるはずだ。 しかし、ヨンキのチームが不可能を乗り越えられず、専門家たちが声を荒げ合う中では、おそらく私の片頭痛が治ることにもないだろう。

あの子には大きな借りがある。 初期段階でも、彼のシミュレーションは本当に没入感が高く、休眠状態であっても入植者を訓練できる可能性を垣間見せた。理想は、新たな故郷にたどり着くときに、彼らが必要な能力をすべて備えた上で目覚めることだ。

#10

ユマは意外にも、私がオフィスに戻って来て喜んでいるようだった。 そして、夕食を食べながらバイオーム決定に関する詳細な状況報告を行うよう頼んできた。仕事を早く切り上げてごちそうを食べられると考えた私は快諾した。正当な労いだと思った。私は線虫の多様性に関する議論を終結させたのだから。

ポプラノをまぶしたリブアイステーキとメルローを口にしながら愚痴をこぼすと、ユマは歯を見せて笑いすらした。彼らが笑えることすら知らなかった私にとっては、一種の勝利のように感じた。 ヨンキがバーで一人で飲んでいたから、呼び寄せて知党前景化問題は解決できたか聞いた。あの子は私たちに緊張しているようだった。トランスヒューマンとの付き合いは私よりも長いはずなのに、なぜだろう?

ユマはヨンキの落ち着きのなさに気付いていなかったのか、礼儀としてあえて口に出さなかったのか、あるいは気にもかけてなかったのか、それは分からない。まあいい。 引き続き見届けようと思う。


#11

ヨンキの様子が一日中おかしかった。 ヨンキに避けられてると気付いた私は、ヨンキが行きそうな場所を手当たり次第あたった。ヨンキを見つけると、ヨンキは事務的に会話を続けてきた。まるで私をからかっているかのようだった。ヨンキのように聡明な子は、神経が過敏になりがちだ……ユマがどのような複雑なデータ処理を行っているのかまったく推測できないのと同じように、ヨンキが何を考えているのかも読めなかった。

そこで、素直に伝えてみた。やっと仲良くなれたと思ってたのに、傷ついた、と。するとヨンキは笑って、少し緊張がほぐれたようだった。私は、食堂で一杯おごるからそれを足掛かりにしようと申し出た。何杯か飲んだところで、ヨンキは夫と息子たちの写真を見せてくれた。

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ヨンキほどの若い青年が家族を持っているとは、思いもしなかった。 私はヨンキがずっと徹夜で働かされていることを考えて先輩風を吹かし、数日間家に帰るよう指示した。

#12

どういうつもりかとヨンキを問いただしたのは間違いだった。 自分がどういう答えを期待していたのかわからないが、その答えは私の経歴に関する「陰謀論」についてなどでは決してなかった……ヨンキは家族と過ごした後でもまだピリピリしてるようだったから、食堂に連れ戻して飲み勝負を挑んだ。何ショットか飲ませただけで、ヨンキはすぐに白状した。

まずは、戦争終盤で私が殺されたという噂を聞いたと吐いた。 それから証拠を掴むために私の人事ファイルにアクセスしたが、ロックアウトされて終わったと認めた。 さすがにやりすぎだったと彼は認めたが、私はそれを笑い飛ばし、まだこうして一緒に飲んでるだろうと安心させてやった。だがすぐに、笑えなくなった。

アーカイブの中に、ヨンキでもアクセス不可能な私のエングラムリストがあったと言うのだ。そんな情報は初耳だ。

#13

あの子に私の人事ファイルを覗き見る権利がないことは分かっているが、信心深いヨンキが過去の敵である私を信頼するのに苦労している理由も理解できる。彼の偏執的の部分に理解がありすぎるのかもしれない…私は愛国者ではないが、トランスヒューマンが私たちに侵略的な集団意識を植え付けようとした戦時中のプロパガンダをすべてなかったことにはできない。

ヨンキが間違っていることを証明したかったのだが、自分のファイルを見たとき、戦後の活動をまとめた部分に引っかかった。Genesisに参加する直前の私の行動のほとんどが誤りのように感じた。さらに、自分の業績記録にも違和感を覚えた。 もちろん、終戦間近の記録については身に覚えがあるが、それらの記憶について感じることが何もない。

どうも嫌な気持ちにさせられた。

#14

昨夜、自分の記録を見て恐れおののいた後、数時間データベースをランダムに検索して自らの形跡を隠そうと努めた。 最初の大きな混乱はヨンキの部門によってもたらされた。彼らはどういうわけか、エミュレーションとアーカイピングの間で、2つの異なる歴史的アイデンティティをもつれさせていた。
アルタ・カリフォルニアの金の探鉱者(支配的人格)に、ローマ帝国初期のアレクサンドリア派のオカルト信仰者の記憶が付与されていたのだ。

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このもつれをほどき、再コンパイルするには大きなリソースが必要となるため、ダウンタイムに修正できるようにフラグを立てておいた。 2組の遺伝子を混合すれば、自然発生ではあり得ない新たな生命が誕生するだろうが、それは2つの魂を無作為に縫い合わせるようなものだ。警告フラグによって哀れな生命に肉体が与えられることがないよう願っている。

AIが異常なエングラムを再び世に出すようなミスを犯すとは思えない。 この件は私を悩ませることになるだろう。正直に言うと、知らずにいられたらどんなによかっただろうと思っている。

#15

昨日ヨンキのアーカイブで台無しになったエングラムが見つかった件で、ヨンキが辞職を申し出てきたが、代わりに仕事を早めに切り上げて食堂で一緒に飲むよう命じた。 自分の被害妄想について相談できる相手があの子しかいないなんて癪だが、そもそも私が疑いを持ち始めたのはヨンキが原因なのだ!それに、そもそもこの妄想がありえるかどうかを判断できるのも、ヨンキしかいない。

私のエングラムも含め、ヨンキのチームがすでに無数のエングラムをプレインバンクに保管していることはわかっていた。 彼らが(自分のことを)蘇生用にエミュレートもアーカイブも行わないと同意したからこそ、私はプロジェクトに参加したのだ。まあ私が反対したところで、どのみち彼らは実行できただろうが。

もしも、ヨンキが耳にした噂が真実だったとしたら?私は本当に戦争終盤で死んでいたのだったとしたら?トランスヒューマンたちが私の記憶を改竄して別のコピーを起動したという想像は、それほどありえない話だろうか?

もしかして私は、「サンティアゴ2.0」なのだろうか?

#16

ユマを問い詰めると、認めた。私はサンティアゴのクローンだと。

性格をバックアップして、その性格を入れる新しい体を作るのにかかった時間をカモフラージュするために、ウソの記憶を埋められていた。 ユマは、私が最も恐れていた被害妄想を事実だと認めた。その態度に少しでも後悔の念を感じられればよかったんだが。理性を失っていた私をよそに、ユマはただ後ずさりして待っていた。私が騒ぎ疲れると、世界を救うためだったと言い放った。ユマにとっては、目的を達成するためにはどんな方法でも正当化されるようだ。

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アーカイブには保存しないという条件でGenesisに加わったときには、私はもうすでにパックアップから復元されてたらしい。これまでに人類が担った中でも最重要の指導的役割を与えられていたそうだ。 私のように世界を変えたり財産を残すことを生涯願い続けた政治家や軍司令官が、大勢いたとまで言われた。

感謝するとでも思ったのだろうか?信じられない。

#17

命をもう一度与えられたと言っても、一体どうすればいいのか分からない。どうせまたアーカイブから呼び戻されるのなら、尚更だ…ある意味で地球共和連合のトランスヒューマンたちは、あの忌々しい技術を使って私を延命させることで、私に復讐しているのかもしれない。 やり直すチャンスをもらってありがたいと思う人もいるかもしれないが、私は太陽の下での生活が忘れられない。

ユマが言うには、私は最初は戦いを終結させ、英雄として死んだらしい。その言葉を鵜呑みにするしかない。なんせ、その記憶は消されてしまったのだから。 サンパウロ(※ブラジルの都市)で過ごした幼少期のことは覚えている。あの人生では連邦のためにTEKギアや軍需品を設計していたが、あの男と私はもはや別人だ。そうだろう?遠い未来に別の星に移住するために再びエングラムをクローン化されたとしても、どうせそのサンティアゴは今の私のことも覚えていない。

まあ、その方がいいのかもしれないが。

#18

ユマがすべてを認めたと、ヨンキに伝えた。そして、私はヨンキと違っていつでも自分のファイルを調べることができたという事実も思い出させてやった。するとヨンキは、自らの名前でデータベースを検索し、アーカイブの中に夫と娘たちを発見したと言った。 ヨンキにとっては、同意があろうとなかろうと、生活と労働のためにここにやって来た瞬間からスキャンされエミュレートされているように感じたのだろう。

敵に期待した自分が馬鹿だったと言ったため、我々はもはや敵ではないと念押ししなければならなかった。 かわいそうに、本当に思い詰めているようだった。しかし説得したことで、なんとか納得してくれたようだった。そう願うばかりだ。

世界を救うには、あの子の力を借りてGenesisを終わらせなければならない。

#19

ユマが押しの強いタイプだとは思っていなかったが、今朝は私たちのスケジュールを調整した上でファームに連れて行ってくれた。 プロジェクト班から飛行機を借りたので、酒泉市(※中国の都市)から出る軌道シャトルに乗ることができた。私は何年も地上にいたため、無重力に四苦八苦した。 ユマはそんな私を見てがっかりしていたのかもしれないが、それを表情に出すことはなかった。

ファームはセレンゲティの上に広がっていた。 種の包含を巡ってバイオテクノロジーと格闘していた長い時間を考えると、パドックを歩きながら本物を間近に見られるというのは不思議な経験だった。
立ち止まって生まれたばかりのクローンマンモスに触れようとすると、鼻を手首に巻き付けてくれた。 実験動物と心を通わせることになるとは思っていなかったが、しばらくそのままでいたいと思っていたのは私だけではないようだった。忘却から引き戻された2つの迷える魂が、お互いを支え合っているかのようだった。

#20

ファームにいたとき、アレシャを見つけ出して尋ねた。軌道上に輸送される土や岩の汚染を、なんとかして完全に除去できないかと。無茶なことを言うなと言われた。当然だ。未加工のエレメントが、他のあらゆる金属の鉱脈と共に地表から打ち上げられることになっていたのだから。 あれほど大量の金属からゼノトキシンを除去できる技術など存在しない。少なくとも、そこまでの時間的猶予はない。

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そこで思いついた。長時間にわたる輸送時間を使って、MEKでバイオームを浄化したらどうだろうか。 コロニーシップが移住可能な星を見つけるまで、どれほどの時間がかかるかまったく分からない。何千年も銀河を飛び回る可能性だってある。

汚染除去は、船内をうろつく機械の助けをもってしても、大変な仕事となるだろう。 そんなことも知らずに私は、ファームの牧草地を闊歩していた、例の更新世の巨大な馬のTEKバージョンの構想に取り掛かっていた....

#21

ファームは、コロニーシップの人工バイオームとユマのARKネットワークのためのプロトタイプだ。ああ、そう言えば…言い忘れていたが、地球へと戻る途中にユマに言われた。トランスヒューマンたちは、我々がコロニーシップを離陸させ次第、ARKのコンセプトを推し進めるつもりのようだ。

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トランスヒューマンは計画に多様性を持たせることで、人類の長期的生存確率が最も高くなると考えている。最適な生存結果を狙って生物形態を試験するために、衛星実験場ネットワークにある我々のアーカイブバージョンを利用したがっている。そして最適な候補を選出次第、軌道上から地球を解毒して種を撒きなおそうとしているのだ。

トランスヒューマンが強化されていない普通の人類を再び住まわせるつもりだと聞いたときは衝撃だった。 クローン体を使って死人を蘇生させるなんて幾分超人間主義が過ぎるかもしれないが、彼らの世界再建計画に彼ら自身が含まれていないという事実は特筆に値する。このことをどう解釈すべきかは分からないが。

#22

研究開発担当の技師たちは、すでに将来の世代のためのツールやギアの開発で忙しくしているため、さらなる負担をかけることを申し訳なく思う。自分の設計したものに価値がないなら、これ以上負荷をかけるようなことはしなかった。だが、大規模な自動化を進めない限り、コロニー船のバイオームからエレメントの汚染の痕跡をすべて見つけて除去することはできない。そこに価値があるのなら、権力を乱用するのも一つの手だ。

加えて、軍事技術とは無関係のものを設計するのは気分がいい。かつて戦場の汚染に一役買った毒素をこすり落とすというアイデアも気に入っている。 今はこのアイデアを除外するべきではないだろうが、ユマも現実世界で私が考えたストライダーのプロトタイプを見れば納得するはずだ。

#23

安全なチャンネルを通じてアレシャにストライダーの案を共有すると、コンセプトの改善に役立ちそうなすばらしいフィードバックをくれた。クルーたちが任務中にストライダーに鞍を装着したくなった場合に備えて、あのMEKの役馬に交換可能な器具を複数取り付けて機能性を上げ、マニュアル操作を導入したらどうかと提案してくれた。いい考えだ。

戦場の汚染物質をサンプリングしていたときにストライダーが欲しかったと言われたときは、少したじろいだが。 だが、おそらく知らないだけだろう。自身が研究していた被害を招いた兵器の多くを設計した張本人は、この私だということを。少なくとも、そうであってほしい。

今度ファームでストライダーに乗せてやると約束してから、通信を終了した。 しかしあれほど巨大なものがドスドス歩き回ったら、せっかく軌道上まで打ち上げた人工生態系が破壊されたりはしないだろうか。

#24

まだ信じられない。1日休みを取って一緒にホバーセール(※今回新しく追加された製作物)するよう、ユマを説得できたなんて。ホバーセールは初めてだとユマは言っていたが、手を貸さなくても十分にできていた。 バランスの取り方や風の乗り方をわざわざ見せなくても、一人で身に着けていた…必要なスキルは何でもその場でダウンロードできるのかもしれない。それは一体どんな気分なんだろう?

夕食を食べながらエルチョロ峡谷の風の壁に乗ったときの話をしていたとき、急にユマに無視された。
まるで誰か別の人間がユマの目を通してこちらを見てるようだった。 MEKのプロトタイプに研究開発費を流用している理由を聞かれ、私は顕微鏡に置かれた細菌みたいにおろおろした。

ストライダーについてはなんとか弁明できたみたいで、エマはまた突然元に戻った。 ユマは領くと、まるで何事もなかったかのように、再びフォークでカリフラワーをつつき始めた。

#25

昨夜のユマとの奇異な時間を通して、私が彼女のことをまったく知らないということが明らかになった。 人間が生活の中で行う、お互いの話を聞く、たそがれる、計画を立てるなどのすべての意識的な行為は、トランスヒューマンにとっては自動的に行なうものなのだろう。人間が呼吸に集中する必要がないように、それを望まない限りは、そのことについて考える必要がないようだ。 彼女たちが本当の意味でどのように考えたり感じたりするのかを理解することはできないのだろう。

理解しようとすることすら時間の無駄に思える。私を連れ戻してここに閉じ込めることを決めたのは彼らだ!私が故意に彼らを苛立たせようとしていることに彼らが気付くことはあるのだろうか?今から中央処理場に行って彼らの大切なアーカイブを削除すれば、ようやく注目を集めることができるかもしれない。
そこに行って、EMP(※強力なパルス状の電磁波のこと)でも作動させれば何もかもすっきりするだろう。

#26

大丈夫、もう落ち着いた。この心の傷は一旦忘れよう。私がミッションに持ち込んだこのプロジェクトをリスクに晒すようなことは絶対にしない。私は人生の大半を、何かを破壊することに費やしてきた。その償いの機会を無駄にするわけにはいかない。種を絶滅から救えるかどうかは、この手にかかっている。 この愚かなプライドを捨て去ることで生き延びるチャンスがあるのなら、喜んでそうしよう。

私は人間だ。それ以上でも以下でもない。 彼らは私の意志に反して私をクローン化し、それを覆い隠すために大量の偽りの記憶を植え付けた。彼らの一員になってほしかったのだろう。ユマは私のことを生まれながらのリーダーだと言った。そこには何か意味があるはずだ。

私はトランスヒューマンの恩人たちを少し羨んでいるのかもしれない…彼らの気持ちをすべて脇に置き、世界を救うために何が必要かということに集中できるなら、どんなに素晴らしいだろう。

#27

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ヨンキからGonisisエンジンで実行している新しい訓練シミュレーションを試すように頼まれたとき、私は軌道を再び下降していた。 意思に反して自分がアーカイブされていることを彼自身が知って以来、彼とは会っていなかったので、気乗りはしなかったものの彼の研究室に向かうことにした。

彼は私たちを自身のシミュレーションに繋いだのだが、それはすでに実行済みの北極のシナリオと同じように見えた。ヨンキは空中で何かのダイヤルを回すと、風が大きく鳴り始めた。 それから、お互いの毛皮のフードが触れそうになるほど身を乗り出すと、誰にも聞かれない場所で話がしたかったと言った。

彼はユマが「私に近付いた」かどうかを知りたがった。私は、それは見当違いだと言った。 長い沈黙の後、記録の件で彼女と対峙する際にはそばにいてくれるのかと聞かれた。私がうなずくと、彼はシミュレーションを終了させた。 オフィスに戻る間、もし私が断っていたら極寒の中に置き去りにされていたかもしれない可能性について考えていた。

#28

今朝3人で会ったときに、ユマが認めた。本人の同意なしにヨンキをアーカイブ用に記録したのは、間違いだったと。 ユマはそれから、私のときと同じ手口でヨンキを説得した。ヨンキは人類の存続のために不可欠だとか、大事なのは結果だとか。

ヨンキは、ユマは非人道的だと言っていた。 ユマがヨンキを大事に思っていることを証明したいと言うと、あの子はユマに飲み勝負を挑んだ。ヨンキは一晩中ユマから情報を聞き出そうと必死だった。 だがしっぺ返しを食らった。ついにしびれを切らしたユマが、地球上の全人類に残されている時間がどれだけ少ないかを吐いた。その知らせを我々が理解したとき、ヨンキが言った。残りの時間は家族と過ごしたいと。

ユマは、もし酔いが覚めても同じ気持ちだったら辞職を認めると言った。 ヨンキは今すぐにでも家に戻って明日の夕方すぐに辞職すると言い張っていたが、辞めてほしくはない。

#29

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今朝、ヨンキが幽霊のように真っ青な顔で本部を歩いていた。ただの二日酔いなんかではなさそうだ。
私には分かる。私も最近、同じ目に遭った。

アーカイブユニットに向かってさまよい歩いていたヨンキをオフィスに連れ込んだ。 ヨンキは目の焦点も定まらないまま、もう辞めたいと呟いていた。理解を示すために、私はヨンキを抱きしめた。するとヨンキは、私の耳に何かをささやいた。その内容は、生涯忘れられないと確信できるものだった。

ヨンキのベストから放たれた超高温のプラズマが私たちを襲ったのは、それから1秒も経ってない。しかし今、私たちの肉塊は逆方向へと飛び、再び統合されようとしている。ユマは、ヨンキの最期の言葉を食い入るように聞いている。 そして今、私たちはまたもや飛び散り、まるでユマがそこにいないかのように、ユマの体を通り抜ける。当然だ。ユマは実際には私のオフィスにはいない。

あの爆発のときに、私という存在は消えたのだ。あるいは、あの爆発の直後にか。 今の私は亡き「サンティアゴ2.0」のエミュレーションで、ユマの忌々しいGenesisエンジンによって動かされているに過ぎない。惨めなものだろう?

#30

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これで最後だという約束で、廃墟と化したオフィスのシミュレーションでユマに再統合された。
ヨンキの最期の言葉を私から聞き出し、検視を終わらせるためだ。ユマを失望させてしまい、申し訳なく思う…時間が足りず、神経インターフェースにあの子の言葉を記録できなかった。

私はユマに聞き返した。ヨンキは辞めるときに何と言っていたのかと。 ユマが言うには、ヨンキはトランスヒューマンによって妙な未来に――それも自分たちとは無関係の未来に――家族を蘇生されるのには、もううんざりだと言っていたそうだ。ユマのアバターの顔からはまったく表情が読み取れないが、私の知覚エミュレートのバグのせいかもしれない。

その後ユマが謝ってきたときには、心底驚いた。秘密を隠していたことと、私の安全を守れなかったことに対する謝罪だ。Genesisへの私の功績に対して礼を言い、未来の別の私が目覚めたときのために幸運を祈ってくれた。私はこう答えた。「心配はいらない。今まで通り生き延びていくだけだ」

それを聞いたユマはなんと、微笑んでくれていた。 シャットダウンされるときも、この感情を忘れずにいたい。




以上がサンティアゴのストーリーとなります!このサンティアゴのノートで、新たに以下の事が判明いたしました。
  1. 昔のホモデウス達は普通に人類と活動を共にしていた(電子媒体ではなかった)
  2. 少しでも人類の生存確率を高めるため、ホモデウス達は計画を2つ同時進行させていた
  3. 1つ目はARKの島々を宇宙に打ち上げ、頃合いを見てまた地球に戻す計画(アイランド~エクスティンクション編ですね)
  4. そして2つ目は宇宙船に種を乗せ、ストライダーで汚染を自動で除去しながら新天地となる別の星を見つける計画(これが今回のGenesisu編)
  5. 時系列としては、宇宙船の打ち上げ→ARK計画が始動したという順番
  6. Genesisu編のサンティアゴは2代目であり、オリジナルは戦死している
  7. クローン化については、一部同意を得ずに行われた(少なくともサンティアゴとヨンキの同意は得ていない)
  8. 計画成功後、ホモデウス達は消滅予定である(ホモデウスの蘇生は計画に含まれていない)

ARK計画よりも前に宇宙へ旅立ったコロニーにロックウェルが干渉していることを考えるに、恐らく細かい時系列は

  • 人類補完計画が始動、ホモデウスと人類を中心に計画がスタート(主に今回のノート内容)
  • 宇宙へ向けコロニーの打ち上げ成功。新天地探しが始まる
  • その後ARKの島々も宇宙への打ち上げに成功、ARK計画が始動する
  • その後何世紀も経過(その間にARKシステムが異常をきたし始める)
  • アイランドにヘレナ爆誕(アイランド編スタート)
  • ロックウェルがエレメントに汚染される(アベレーション編)
  • 地球の汚染源を討伐しARK計画が始動。地球に島々が帰還を始める(エクスティンクション編)
  • アベレーション世界と共に地球に降り立ったロックウェル、何らかの方法でコロニーへハッキング・アクセスし、船の主導権を乗っ取り始める(ジェネシス編スタート)
という感じじゃないでしょうかね!てっきりエクスティンクション編の後に蘇生した人類が、「やっぱり地球はだめだー!汚染とれねー!新天地探すゾ!」ってなって今度は宇宙船を打ち上げたんだと思ってたんですが、どうやらジェネシス計画のほうが先にスタートしていたみたいです。びっくり!

そして我々が最初に会うことになるアベレーション編のサンティアゴは、実は3代目だったことも判明しましたね。オリジナルが戦死→その後ジェネシス計画のためにクローンが作成される(2代目)→ヨンキの自爆により死亡(最後に一瞬だけ意識をユマに蘇生される)→アベレーション編でクローンが作成される(3代目)。何回もサンティアゴを生き返らせているところをみると、もしかしたら我々が知っているヘレナやロックウェルも、2代目ではなく4代目…はては10代目あたりかもしれませんね。ただサンティアゴは明かに特別扱いされているため、優秀な人間は繰り返しクローンを作っている可能性が高そうです。

ちなみに30番目のノートで「これが最後だという約束で…」とありますが、アベレーション編でサンティアゴのクローンが作られているところをみるに約束は特に守られていないようですね!自分の意志とは関係なく何度も蘇生されるサンティアゴには同情せざる得ない…。

さて、以上がサンティアゴのストーリーでした!!色々新しい事実が判明したところで、今度は代々コロニーの管理を任されている船員、ニダのストーリーを紹介していきたいと思います。お楽しみに。


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