ファンには物足りない出来?映画版モンスターハンター
3月26日。モンスターハンターライズの発売と同時に映画モンスターハンターが公開されましたね!モンハンの世界観がとっても好きなので、初日にウキウキで見に行ってきました。なので今回は映画モンスターハンターの感想を書いていきたいと思います。
ネタバレ有で書きますのでこれから見に行く予定の人はご注意ください。評判や内容を確認してから見に行きたい、映画見たから他の人の感想を見てみたいという方のみお進み頂ければと思います。
総評
手っ取り早く結論から言ってしまうと、「映画モンスターハンターはゲームをプレイしたことのない人には楽しめるが、コアなファンがみるとガッカリする映画」です。予告動画などを見て「あのモンスターはでてくるかな!」「この要素はでてくるかな!」「世界観はどんなのかな!」ってウキウキして見に行くととても残念なことになります。この映画は例えるならチョコレートパフェのチョコ部分だけ頑張った感じの映画です。チョコ部分はおいしい。おいしいのだが…土台のフレーク部分はまずいし、一番上にのせてる飾りも小さいしトッピングも少ない。チョコ部分だけはおいしいのでそこだけを目的にしてる人は満足しますが、「チョコパフェ」全体としてみた場合「ここをこうすればもっとおいしくできるのに…」というツッコミどころが非常に多い出来となっております。
そして恐らくゲーム未プレイの方々からも大ヒンシュクを買っている部分。それは「俺たちの戦いはまだまだこれからだ!」エンドで終わるところです。そう、この映画きちんと終わらないんです…。恐らく続編を作る気でいる(というかいてくれないと困る)せいだとは思いますが…。完全燃焼して映画館からスッキリした顔で帰る、といった類の映画ではないので見に行く人は覚悟しておきましょう。
総評を簡単に言ったところで、ここからは細かく映画内容を見ていきつつ良かった点・ダメだった点を見ていきたいと思います。
映画全編を通して出てくるモンスター
まずチョコパフェのチョコ部分となる、出てくるモンスター達を全て見てみましょう。公式ムービーを見る限り出てくるモンスターはディアブロス亜種とネルスキュラ、リオレウスなど、5種類のモンスターを確認できますが…。- ディアブロス亜種
- ネルスキュラ
- アプケロス
- ガレオス
- リオレウス
- ゴア・マガラ
ただチョコの部分だけあって、モンスターの出来栄えについては100点満点です。現代技術で作られたモンスター達の迫力はすごく、実際に戦ったらきっとこんな感じなんだろうなーという絶望感を味合わせてくれます。特にムービーのメインにもなっているディアブロスとリオレウスには力を入れていることがわかります。動きも自然であり、ゲーム中の鳴き声も忠実に再現してくれています。
ただこの映画の一番いい点はここに尽きると言っても過言ではありません。モンスターがすごい。以上!
ちなみに作中出てくるモンスターの活躍時間の割合は…
映画全編を通して、どのモンスターがどれくらい出てくるか割合で表した場合以下のようになります。- ディアブロス亜種 (30%)
- ネルスキュラ(30%)
- アプケロスとガレオス(3%)
- リオレウス(17%)
- ゴア・マガラ(0.5%)
残りの19.5%は何かというと……ハンターとのバトルで19.5%でしょう。ゴア・マガラはまじでゴマ粒程度しか出番がないです。
モンスターハンターワールドの登場人物について
次に登場人物についてみていきましょう。ワールドをプレイ済みで予告編などを見ている人ならわかると思いますが、この映画は「モンスターハンターワールドのNPC」達が登場人物としてでてきます。登場するNPCは以下の通り
- 調査班リーダー(総司令の孫。作中での名前はハンター)
- 大団長
- 料理長アイルー
- 受付嬢(ワールドの相棒)
- 陽気な推薦組(エイデン)
- 陽気な推薦組の相棒
今回メインに活躍しているハンターが調査班リーダーで
こちらが大団長
とそのお供アイルーの料理長
受付嬢
陽気な推薦組(エイデン)
と、その相棒
もしかしたらほかにもいるのかもしれませんが、メインで出てきているワールドの主要人物は上記の6名です。
登場人物の良かった点としては、それぞれちゃんと役割をこなしている点でしょうか。リーダーがやや乱暴気味でおちゃめな感じがしますがあれはあれでありだと思いました。料理長アイルーが料理をしてくれるシーンなんかはまんまゲームの料理ムービーなので、憎い演出をしてくれたなと思います。
登場人物は同じだがパラレルワールド設定
上記の通りワールドのキャラクター達が登場してきますが、映画を見た感じワールドの登場人物を使ったパラレルワールドのお話のようですね。理由としてはワールドの映画特別クエストでアルテミスが大団長と会うのですが、そこで大団長が彼女の事を知らない事(過去の出来事なら覚えている)。リーダーが新大陸から出てきており妻子がいる(いた)設定であること。ゲーム中彼にそんな設定は見当たらないし、もしそうならゲームは未来軸のお話となるんですが、ゲーム中の大団長はアルテミスを覚えていないのでその線もなくなります。
映画の舞台が新大陸ではないと思っている理由ですが、これは出てくるモンスターが全部MH4Gのモンスターだからです。登場人物はワールドから引っ張ってきているのに出てくるモンスターはワールドのものじゃないんですよね(これは制作を開始したのが10年前で、当時の最新作がMH4だったからというのが理由のようです)。
なので最初新大陸から調査のために大団長一行が出てきてるのかと思っていましたが、色々と内容のつじつまが合わないため映画はパラレルワールドと結論付けました。まあ細かい設定の作り込みが甘いので恐らくこのあたりの事は全然考えてない可能性の方が高そうですが。ワールドから登場人物だけ借りてきて新しい世界を作り上げた感じじゃないでしょうか。
人vs人パートが長すぎる
さて、映画なのでヒューマンドラマが挟まるのは致し方ないとも言えますが、本作はそれが無駄に長いです。アルテミス隊がモンスターと戦うくだりは大満足なのですが、そのあとに控えているアルテミスvsリーダー部分がよろしくない。あまりにも長い。なんでお前ら戦ってるの?としか言いようがない。だってリーダー、最初アルテミス隊を助けようとしてたよね?弓で危険信号送って退避を促したり、ディアブロスに追われてるところを助けてあげたり、ネルスキュラから逃げてる時も助けてましたよね。でもいざアルテミスを相対するとなった時には何故か首元にナイフを突きつけて襲うという暴挙に出ます。そら反撃されるわ、としか言いようがありません。
その後10分程度すったもんだしてアルテミスが折れる形でようやく和解しますが、このパート必要だった?感が否めませんでした。この辺りはミラ・ジョヴォヴィッチとトニー・ジャーを魅力的に見せるための映画特有の演出だと思いますが…。この映画を見に来ている人の99%は人vs人ではなく人vsモンスターを期待して見に来ているので、やはりこの部分はいらなかったとしか言いようがない。
警戒するならバックボーンの説明を
せめてリーダーがアルテミスを手荒に扱った理由を簡単にでいいからもう少し掘り下げてほしかったですね。大団長曰くアルテミス以外にも現代から人が来たことがあるため警戒していた、とのことですが、現代人ってだけでいきなり喉元にナイフ突きつけるものかい?過去に現代人に攻撃されたことがあるため警戒していた、ということかとは思いますが、そうならそうと言ってほしい。なんでそこはぼんやりぼかすの!でも言葉を研究して覚えるくらい大団長は彼らと接してたことになるので、やはりよく分からない設定ですね。なのでこのあたりは考えるのをやめました。
モンスターの生態系について
モンスターハンターの最大の売りはやはりモンスターと戦う事かと思いますので、映画はその点モンスター単体にピントを合わせて作ったのでしょう。だから彼らの生態系についてはかなりお粗末な作りとなっているのもしょうがないのかなと思います。が、やはり少しだけでもいいからこの辺りにも触れてほしかった…。砂漠地帯ではディアブロスとネルスキュラしか出て来ません。高台から見渡した景色は限りなく砂漠で、オアシスや他の生物の姿かたちは一切見当たりませんでした。こうなるとモンスターの生態好きとしては「普段彼らは何を食べて生きているのか?」という疑問が沸いてきてしまうんですよね。
ネルスキュラは人間も襲う設定ですが好物はゲリョスです。でもあの一帯にゲリョスが住んでそうかと聞かれるとかなり疑問が残ります。ディアブロスは草食でサボテンを主食としてますが砂漠にサボテン1個生えていませんでした。さすがに1個くらい生やしてくれてもよかったんじゃない?ディアブロスを目視してる際においしそうにサボテン食べてる姿を1枚挟むだけでもよくない?ダメ?
森林地帯にはさすがにアプケロスとガレオスがいたのでレウスなどはご飯に困らないかと思いますが…。やはりもうちょっとこう、生態系についてワンシーンでいいのでカットを入れてほしかったですね!ジュラシックパークみたいにこれだけモンスターが生息していますよ!みたいな引きのシーンだけでもいいから欲しかった。
ただまあ最初に書いた通りモンスターハンターの最大の売りはモンスターと戦う事なので、映画の尺上ここは削られてもしょうがない部分なのかなとは感じています。ただ環境生物1匹さえ出てこない世界と言うのはやはりちょっと異質に見えますね。
何故全部オリジナルBGMなのか
予告編で盛大にモンスターハンターのテーマ曲である「英雄の証」を流していたので、本編でもここぞというときに流れるものかと思っていましたが流れませんでした!というかモンスターハンターで使われるBGM1個も使われていません!そんなことある?!これモンハンの映画だよね?!アレンジでもいいから普通流さない…?どうやら吹き替え版のスタッフロールでは流れるらしいのですが、それはそれでなんで吹き替え版でだけ流すのか意味が分からない。モンハンのテーマ曲が英雄の証であることは世界共通のはずだが…。
勿論全部とは言いませんが、ディアブロスとリオレウスと戦う時くらいはアレンジBGMにしてよかったのでは?ディアブロスとリオレウス倒したときに勝利BGMをさらっと流してもよかったのでは…?BGMに関しては見終わった後にドウシテ…ナゼ……という感情しか出てきませんでした。スタッフロールでいいから字幕版も英雄の証流してよぉぉー!
まさかのエンディング
みなさんはあのエンディング予想してました?私はスタッフロールが流れ始めた瞬間素で「え?!」って言っちゃいましたよ。そこはゴア・マガラ倒していけよ!!なんでそこで終わるんだよ!!私の左隣の人もスタッフロールで頭抱えてたよ!!ていうかゴマちゃん予告編で出してたから戦闘シーンあるんだって期待してたのにないのかよ!登場時間10秒はあんまりでしょ!!ゴマちゃんファン泣くぞ!!
恐らくバイオハザードみたいに人気が出たら続編作る気でいるんだと思いますが(というかそうじゃないと困る)それにしてもこの終わり方はないでしょう。こんな終わり方じゃ逆に人気でないぞ。尻切れトンボじゃんかよ…。
こだわりポイントは高評価
ファミ通のインタビューで監督が「コアなモンハンファンなら思わずニヤリとするような造形や演出をたくさんいれました」と答えているように、監督のこだわりポイントは作中でいくつも見つけることができます。その点は確かにとてもいい出来だったんじゃないでしょうか。角が部位破壊されたりネルスキュラの毒で一瞬意識が朦朧としてよろめいてしまうディアブロス。剥ぎ取りやゲーム中に出てくる武器やクラッチクローなどの装備品。リーダーが弓を撃つ際のモーションがゲームと完璧に一緒など、挙げればきりがない程あちらこちらににくい演出をしてくれています。
ファンの方はそういった演出を探しながら映画を見てみると、ちょっとはこの映画を楽しめるんじゃないでしょうかね!
そのほか気になる細かい点
アイルーの声
ファミ通のインタビューを読む限りアイルーの声にはかなりこだわりぬいたらしいんですが…。普通のアイルーならあの声でドンピシャ!かわいい!ってなりますが残念なことに本作で出てくるアイルーは大団長のオトモアイルーである料理長だけなんですよね。正直彼にあのかわいい声は似合わない。大団長のアイルーを使うならワールドと同じしゃがれた渋い声にしてほしかった。ラスボスについて
世界が繋がってしまった原因が天廊にあるという設定なわけですが…。天廊というからにはラスボスはゴア・マガラじゃなくてドゥレムディラにしてほしかったなーと思いました。もしくはリオレウスは別の場所で大活躍させて天廊の番人はドゥレムディラに譲るでもいい。もともと天廊の番人って設定だしピッタリじゃないですか?ただまあドゥレムディラは今は亡きフロンティアにしか出てこないし、知名度と人気度を考えるとゴア・マガラに決定したのも致し方ないんでしょう。続編で天廊を登る設定でいくなら是非ドゥレムディラを出して欲しいですね!大団長もっと活躍して!
大団長という肩書を背負ってるからには調査団の中で大団長が一番強いと思うのですが、作中一番活躍しているのが現代人とリーダーという…大団長ー!もっと活躍してー!!レウス戦もほとんど登場してないよね!リオレウスにトドメ刺したのもリーダーだし…大団長ー?!アルテミス「ついてきたの?」
大団長「俺たちの世界の生物だからな」
じゃねーよ!意気揚々と砂丘の向こうから逆光背負って登場してきたけどぶっちゃけ大団長なんもしてないからね?!ワールドでもそうだったけど仕事して!
次回作が作られたら流石にゴア・マガラ戦で活躍すると思いたいが…。ここはラージャン出すしかねえな…?
モンハン初心者にはおすすめ
ここまでつらつらとあれがダメここが足りないとダメだしばかりしてきましたが、モンスターハンターをあまり知らない、もしくはモンハンは映画が初めて!という人には楽しめる映画にはなってるんじゃないかなと思います。モンスター達の迫力満点ですしアクションシーンも悪くない。終わり方にさえ目をつぶればいい映画に仕上がってるんじゃないでしょうか。ファミ通のインタビューで「映画がきっかけとなってゲームをプレイするような人も大勢いる」と言っていたように、これをきっかけに同日に発売されたモンスターハンターライズを購入する人も出てくるかもしれません。少なくともモンスターハンター未プレイの人がゲームに触れるための1つの入口にはなってくれたんじゃないかなと思いました。
ただやはりコアなファンから見た場合は物足りない…!勿論尺の都合や予算で作りこめなかった部分があることや、見栄えする映像にするために不要と感じられるシーンが入っていたりすることに理解はできます。理解はできますが…う~~~ん!ファンとしてはやはりもうちょっと頑張ってほしかったのが素直な感想ですね!!
色々と不安はありますが、あんな終わり方をしたからには絶対に続編を作ってほしいところですね!そしてゴア・マガラ→シャガルマガラ戦を見せてくれ~~!!頼むーーー!!
作品情報
- 正式名称:モンスターハンター(原題:Monster Hunter)
- 日本公開日:2021年3月26日
- 上映時間:104分(1時間46分)
- 監督:ポール・W・S・アンダーソン
- 主演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー
中々酷い映画でしたね…
ゴアマガラとても好きなだけに残念でしたが最後に皆で武器構えて掛かって終わるところはモンハンのOPらしくて悪く無いかと思います指摘されている通り幸いモンスターの造形だけは完璧ですし英雄の証流れてればなおよかった
モンスターの登場数と生態描写の少なさに関しても同意です。せっかくネルスキュラ出すんだったら火に弱いとか中途半端な再現じゃなくゲリョス食って欲しかったですね
でも個人的に一番なんだかなあって思ったのはB級パニック映画並みの露骨な続編フラグでした(最後の伏線ゼロで出てくる謎の男とか)
まあ続編やるなら汚名返上のチャンスにもなるし期待はしたいところですね